スイス国立銀行がホールセール型CBDC発行計画を発表
チューリッヒで開かれた会議で、SNB(スイス国立銀行)のトーマス・ジョーダン(Thomas Jordan)中央銀行総裁が、パイロットプロジェクトの一環として、スイスのSIXデジタル取引所(SIX Digital Exchange)でホールセールCBDC(中央銀行発行デジタル通貨)を発行する計画を発表したことが明らかになった。
ホールセールCBDCは、金融機関が銀行間取引に利用するために設計されたものである一方、リテールCBDCは、一般の人々が利用するためのものである。CBDCはSIXデジタル取引所で発行され、期間限定で運営される予定であると同中央銀行総裁は6月26日(月曜日)にチューリッヒで開催されたポイント・ゼロ・フォーラムでの発言を引用。同フォーラムでジョーダン中央銀行総裁は次のように語っている。
これは単なる実験ではなく、銀行準備金と同等のリアルマネーであり、市場参加者との実際の取引をテストするのが目的だ。われわれは、リテールCBDCを導入しないことを排除するものではないが、現時点では少し慎重である。
スイスはCBDCで独自路線へ
急速に変化する金融情勢の中で、スイスは独自の道を歩んでおり、EUに加盟しておらず、EUの通貨ユーロも使用していない代わり、独自の通貨スイス・フランを持っている。
同国はかねてよりデジタル通貨を検討しており、2021年1月には、e-フランやデジタルスイスフランといった特許を取得したが、同国の金融エリートは2020年以降、卸売のみの選択肢を望んでいる。そのため、スイスがホールセールCBDCの道を選んだのは、欧州の隣国である英国やEUがリテールオプションに取り組んできたのとは対照的だ。しかし、この選択は、金融サービスのハブとしてのスイスのイメージに沿ったものである。
GDP(国内総生産)に占める金融・保険サービスの割合は長期的に減少傾向にあり、2022年は9%で、2011年の10%を下回っているなどの現状もあり、金融サービスのハブとしての地位を取り戻すための戦略とも言える。また、SNBのトーマス・モーザー(Thomas Moser)理事メンバーは2022年、CBDCが分散型金融とうまく機能する可能性があると語っており、CBDCの概念実証を完了したプロジェクトHelvetiaの一環として、5つの銀行のバックオフィスシステムに統合している。これは、その1年前にSNBのチーフエコノミストであったカルロス・レンツ(Carlos Lenz)氏が表明した、ブロックチェーンはCBDCのプラットフォームには適しておらず、国はCBDCを発行するつもりはないという立場からの転換であった。
今年初め、ECB(欧州中央銀行)は、デジタル・ユーロをプログラム可能にする計画を撤回しており、ECBの広報担当者は、いかなるCBDCもプログラム可能な通貨にはならないと述べている。