STOのリアリティ|証券型トークンはビジネスをどう変えるか? =国内最大級のカンファレンス「btokyo」レポート

STOのリアリティ|証券型トークンはビジネスをどう変えるか? =国内最大級のカンファレンス「btokyo」レポート

証券型トークン(セキュリティトークン)を用いたSTO(セキュリティトークンオファリング)は、ICO、IEOの次に注目される新たな資金調達の手段である。日本においては、資金決済法・金融商品取引法が改正されて2020年4月に施行される見込みであり、証券型トークンの市場が急激に成長することが予想されている。

最近では、日本国内におけるSTOを取りまとめる団体としてSBI証券が主導の下、野村證券や大和証券などによって「日本STO協会」が発足することが発表されている。

今回の議題「STOのリアリティ|証券型トークンはビジネスをどう変えるか?」では、STOに関する知識や実績を持つ4人が、STOをはじめとする証券型トークンの未来と現実を語った。

登壇社

河合 健(アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー)

1988年3月、京都大学法学部卒。1988年4月から2005年3月まで、東京銀行、東京三菱銀行(現 三菱UFJ銀行)で勤務。2008年3月、神戸大学法科大学院(法務博士(専門職))修了。2009年12月、司法修習(62期)を経てビンガム・坂井・三村・相澤法律事務所(外国法共同事業)入所。2015年3月、同事務所カウンセル就任。2015年4月、統合によりアンダーソン・毛利・友常法律事務所スペシャル・カウンセル就任。2018年1月、同事務所パートナー就任。

カルロス・ドミンゴ(セキュリタイズ創業者兼CEO)

Carlos Domingo氏は起業家、投資家、シニアエグゼクティブ、現在はSecuritizeのCEO兼共同創業者。 また、トークン化されたベンチャーキャピタルであるSPiCEの共同創業者でもある。 世界規模でSPiCEの法令遵守を確実にするために、証券トークンの発行とそのライフサイクルを管理するプラットフォームを立ち上げ、それが後のSecuritizeです。SPiCE とSecuritize 以前にCarlos氏は、Telefonica R&Dの社長兼CEOでした。その他にも世界最大のアクセラレーターの1つであるWayraの共同創業者兼取締役でした。Carlos氏は複数の技術スタートアップのCTOやCEO、取締役を務めてきています。

齊藤 達哉(三菱UFJ信託銀行株式会社 調査役補)

2010年入社。法人営業で融資や不動産の仲介営業を担当。その後システムセクションでIT企画に携わる。2016年、FinTech推進室が設立され、一人目の専任担当として三菱UFJ信託銀行におけるFinTech業務を推進。現在は行動履歴や身体情報や資産状況といったパーソナルデータから、その個人のライフサイクルや趣味嗜好に合致した商品やサービスの創出やマッチングを可能にするサービス「Dprime」や、暗号資産保全信託等のプロジェクトマネージャーを務めている。

能登谷 寛(三井不動産ベンチャー共創事業部 主事)

2016年4月より三井不動産のCVC部門である31VENTURESでファンドマネージャー業務に従事。スタートアップへの投資およびVCファンドへの戦略的LP出資を行い、戦略的なリターンとフィナンシャルなリターンの両面のバランスを取りつつ業務を遂行中。日本だけでなく、米国、英国、シンガポールおよびイスラエルへの投資を担当。投資先企業は不動産テックだけでなく、ブロックチェーン、コンピュータービジョン、サイバーセキュリティ、IoT等多岐に渡る。CVCファンドの業務以前には、三井不動産の法務部門にて不動産ファイナンス案件や東南アジアの開発案件の法務支援に従事。

STOのリアリティ|証券型トークンはビジネスをどう変えるか?

Q.今後のSTマーケットは?

  • カルロス・ドミンゴ

セキュリタイズとは、2017年に始めてセキュティトークンを発行しました。数々の出資を受けています。事業内容は発行から、トレードから、資金調達まで一括で取り組めるプラットフォームを構築しています。

今は50社以上のお客様、11のトークンを発行しました。不動産、ファンド、証券をやっているのはセキュリタイズだけです。
最近、SECからライセンスを受けました。オーナーシップ、ログを提供するだけでなく、全てを賄えるのが我々のプラットフォームです。さらに現在、STOを控える企業がたくさんあります。証券ブローカーは、この証券を使って資金調達することが出来ます。発行からライフスタイルマネジメントまで、ブローカーディーラー、カストディアンと組みながら進めています。

  • 齊藤 達哉

証券にデジタルが適応されるのは非常にポジティブで可能性を感じている。資金を調達したい発行体、投資をしたい投資家にとってクイックに、いろんなところから調達したいニーズに応えられる。投資家としては、運営コストが上がって利回りが下がっている。ここが一気にゲームチェンジになるのではと思っています。デジタル化が必然で、仮想通貨と同じように投資家の権利を保護する方法を模索したい。

スタートアップ中心に育ってきたが、これまでのプレーヤーは入れるのか?

  • 能登谷 寛

不動産、証券のデジタル化について、ユニークな点は買う人によって値段が全然ちがう。上手なマーケティングをして、上手に売ると価値が高まる。インターネットを通して、物好きな投資家を探せるので新しい流通が起こるのではと考えている。

バブルがはじけて、国内では流通ができず海外からリートを入れた。そこから日本の不動産は変化してきた。ただの暗号の羅列が時価総額15兆まで成長し、地方の不動産に海外の投資家がビットコインで投資する、なんてのも増えている。

消費者はわがままになっているので、日本の証券取引の市場が対応できていない。これから新しい層へのリーチができるかもしれないと期待している。

不動産以外の証券のデジタル化で面白い領域は?

  • 齊藤 達哉

セキュタイゼーションの再来が面白い。信託から証券、法的には受益証券となる。また、流動性が低くて証券化出来なかったものがSTO になることによって資金調達の多様化が進む。

アニメ、マンガの知的財産権を担保として作品を作るために資金を調達してもいいかも。詐欺がないように、どのように法律で担保するか。

  • カルロス・ドミンゴ

事例を紹介します。我々のプラットフォームで、NBAのプレーヤーが今後3年間の契約金を証券化するとしました。好きなバスケットプレイヤーに対して投資ができる。証券会社がプロモーションをかける例としては非常に面白い点だと思います。

ICOでのアイデアはほとんど実現しなかった。どのような仕組みでプロジェクトの詐欺を防げるか?

  • カルロス・ドミンゴ

証券の登録、登記が問題として直面します。投資家としては必ず必要です。どうすれば証券化した証券を販売できるのか、仕組みを考え、販売活動ができるように各国の弁護士と話したり、ツールを作ったり。不法な状態では出来ない。

今までと変わらない点は多いが、発行から承認まで一連の流れを作ることが重要。

日本でもプラットフォームをやるのでは?

  • カルロス・ドミンゴ

ワクワクしています。三井不動産、野村さんともパートナーシップを組みました。

経済規模や、新しいテクノロジーが好きであること。日本の人にとって魅力だと思います。パートナーと協議しながら進めたいと思います。

日本の企業の姿勢は?

  • 能登谷 寛

まずはトライしてみる。セキュリタイズだけではダメ。多くの投資家が入ってからセキュリタイズに入った。みんなで進めていくしかない。

  • 齊藤 達哉

自前主義から脱却したい。プロフェッショナルがいるのでおれば、組み合わせて活かしたい。我々は投資家の保護を実現するための知見が長けている。実際のオペレーションを回していくのが役割。

  • カルロス・ドミンゴ

SECからライセンスの許可をいただきました。アメリカが一番厳しいが、申請をしてから約1ヶ月、フィードバックがあります。先ほどと同じようなことが書かれていましたが、我々は投資家を守っていきたい。プライベートになると非常に見えない、規制当局から見えない。それが改善できる。

ブロックチェーン上であれば嘘がつけない。消すこともできない。投資家からみても大きなアドバンテージになる。法律に遵守していることが重要となる。テクノロジーを設計できる、まさにブロックチェーンの醍醐味です。

日本でのSTO 実施への課題をいかに解決するか

  • 能登谷 寛

不動産、農業は最も遅れている。不動産の人はブロックチェーンを知らないのが事実。日常の業務に活用されると説明している。何が効果があるのか話せると、不動産市場は急激に成長する。

儲かるからやる、それが不動産業界だ。

  • 齊藤 達哉

グローバルアクセスが重要。セキュリティトークンと、ブロックチェーンの中で取引できるものが必要。ポテンシャルを上げるために必要。ステーブルコインにはバックアセットがある。しかし、不透明、どう担保するのか。ICOの世界と証券の世界は違う。似てるけど違う大きな違いがある。

  • カルロス・ドミンゴ

大手の金融機関から始まる。どうやって業界が一丸となって進むのかが大事。誰かが作らなければならない、なのでインセンティブが必要でありと考える。

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