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仮想通貨が「有価証券」に該当した場合、どうなるのでしょうか?
仮想通貨市場において「有価証券」に関する問題は、今後の仮想通貨の価格や価値を大きく左右します。2019年に突入した現在、ビットコインをはじめとする仮想通貨を有価証券とする方向で検討が進められていますが、多くの時間を要するかもしれません。
仮想通貨市場に参入したユーザーや投資家たちは、トレード方法テクニカル分析、市場の情報収集には詳しいのだが、規制に関する内容や重要性、今後の動向などについてはあまり知らない部分が多いのです。
仮想通貨における「有価証券」とは何か。また、仮想通貨が有価証券に該当するとなれば、どのようなメリットがあり、どのようなデメリットがあるのかわかりやすく解説していきます。
有価証券(証券)とは
有価証券とは仮想通貨業界のみで使用される言葉や、証券ではありません。
まずはじめに証券とは、伝統的には財産的価値のある私権を表彰するものであり、その権利の発生、移転または公式の全部または、一部が証券によってなされるものを指します。
要するに、法律によって定められた財産に関する権利や義務についてを記載してある証明書に近いものであり、それ自体が財産的な価値を有しているのが証券の特徴となります。ですので、有価証券は財産的価値が存在しており、それを売却することで、その証券の価値に対する対価を受け取り、購入者には財産的な権利の移転が行われます。
証券としての代表例は、以下のものが挙げられます。
- 株式
- 債券
- 手形
- 小切手
また、金融商品取引法の第2条において、「国債、社債、株券、新株予約権証券、投資信託の受益証券」なども有価証券に該当します。
仮想通貨は有価証券に該当するのか?
ではこれらを踏まえて仮想通貨は有価証券に該当するのか?
もちろん世界各国では、仮想通貨に関する規制がそれぞれ異なっているため、その国の規制当局が仮想通貨をどの分野に分類するのかを決定しなくてはいけません。
しかし今回は、世界の経済や金融などの規制に関して圧倒的なリードを誇っているアメリカでの規制ルールに注目していきます。
米証券取引委員会(SEC)
仮想通貨ユーザーや投資家なら必ず耳にする「米国証券取引員会(SEC)」は、その名の通り米国における証券の規制を仕切っています。
SECは2018年11月、仮想通貨の資金調達方法であるICO(イニシャルコインオファリング)を有価証券とみなし、規制する方針であることを発表しました。
この資金調達方法であるICOでは、ユーザーや投資家がプロジェクトに対して資産を提供した対価として「トークン」と呼ばれる同プロジェクトが発行した仮想通貨を分配します。これらの一連の流れは株式を使用した資金調達方法であるIPOと非常に似ています。
この際のトークンは、株式と同様にプロジェクトが順調に進むなど、チャートが右肩上がりになれば、その分の収益を獲得することができます。このように「仮想通貨(トークン)」は「株式」と共通する点が多く存在するため、SECは「仮想通貨を有価証券として定義すべきである」と考えているのです。
米国商品先物取引委員会(CFTC)
米国先物取引委員会(CFTC)は2017年7月、ビットコイン先物の取引を認可しています。CFTCがビットコイン先物を認可したことで、ビットコインをコモディティ(商品)と同格に判断したことになります。
そして実際に2017年12月には、シカゴマーカンタイル取引所(CME)およびシカゴオプション取引所(CBOE)がビットコイン先物をスタートさせています。
CFTCに認められ商品先物取引所で取引されているコモディティ(商品)は次のようなものが挙げられます。
- エネルギー(原油、ガスなど)
- 貴金属(金、銀、プラチナなど)
- 穀物(小麦、大豆、とうもろこしなど)
- 非鉄金属(銅アルミなど)
しかし、これらの商品先物取引所で取引されているコモディティは、共通して実物(目に見えるもの)の資産が該当するのです。
米国連邦地方裁判所
CFTCは以前から、仮想通貨は商品であり、仮想通貨をCFTCの規制支配下に置くべきであると主張していました。これに対して米国連邦地方裁判所は2018年3月6日、ビットコインなどの仮想通貨はコモディティ(商品)であると判決を下し、次のように述べている。
「CFTCが仮想通貨市場の不正行為を捜査する権限を有しているということを示す、非常に重要な判決である。ニューヨークの連邦地方裁判所で行われた裁判での、Weinstein裁判官の判決と同じように、この判決はCEA(商品取引所法)におけるコモディティ(商品)の定義を認め、CFTCが仮想通貨を含む商品に関する不正行為を起訴する権限を持つことを認めることとなった。」
金融庁(日本)
日本の仮想通貨を規制する金融庁は、2017年4月1日に施行した「改正資金決済法」によって、「仮想通貨はモノの購入やレンタル、サービスの提供を受ける場合、それらの代金の支払いのために使用でき、不特定の相手と売買できる財産的価値があるもの」と定義しています。
金融庁が定めるこの定義では、仮想通貨は「決済手段」であり、売買できる財産的価値とういう説明から「有価証券」「財産」にも属するような説明となっている。
その他の規制機関
そのほかにも仮想通貨に関する規制機関である米国国内歳入国(IRS)は、仮想通貨を「Property(財産)」と位置づけており、欧州司法裁判所(ECJ)はビットコインが「決済手段」であると判断し仮想通貨の定義を柔軟に定義しています。
仮想通貨が有価証券に概要する場合
もし、仮想通貨が有価証券に該当することとなれば、規制当局によってや政府当局、法律によって仮想通貨の取引やルール、資金調達方法までコントロールされていきます。
また証券化された場合、仮想通貨は米証券取引委員会(SEC)の監督下に置かれ、これからICOを行うトークンはもちろん、これまでICOで資金調達したトークンまで規制が厳しくなります。さらに、インサイダーや価格操縦、買い煽り、マーケティングメイクなど、現在の有価証券に該当する株式などのよう行為一切禁止さとなります。
このように、投資家の目線から考えると規制当局の監視下に置かれることで、安全かつ安定的な価格での取引、最終的にはば証券取引所に上場など投資家にとってはメリットが多くなるように感じられます。
しかしそれとは逆に、トークンを発行するプロジェクト側からすれば「証券化」されることによって資金調達や、プロジェクトの遂行など、今まで以上に厳しいルールの中で運営していかなければならず、仮想通貨およびブロックチェーンという技術に参入する企業や団体が過疎ってしまうかもしれないのです。
各目線からの仮想通貨の「証券化」はメリット、デメリットが異なり、「有価証券に該当する・しない」という決定には今後とも注目が集まります。また、私たちが住む日本の仮想通貨に関する規制方針は米国の規制によって大きく動くことが考えられます。