モスクワ証券取引所、12月1日にBTC・ETH・USDTの取引を開始

既存インフラを活用した段階的な市場開放

モスクワ証券取引所は、2026年12月1日よりロシア初となる公的なデジタル通貨市場を開設し、暗号資産取引を本格的に始動する方針を打ち出した。

今回の導入により、国内の投資環境やクロスボーダー決済のあり方に大きな変化が訪れると見られている。12月1日からの導入初期においては、試験的な取引運用を通じて準備の整った参加者から順次ネットワークへ接続される予定だ。最大の特長は、全く新しい独立したプラットフォームを立ち上げるのではなく、同取引所が誇る既存の株式市場インフラやテクノロジーを全面的に流用する点にある。

清算・決済業務についても、株式や債券と同様にNCC(国立清算センター)を経由して実施される。これにより、独自の管理・保管体制を個々に構築する一般的な暗号資産取引所とは一線を画す、高度に組織化された市場構造が実現する。取引時間は株式市場のスケジュールに準拠し、モスクワ時間の午前6時50分から午後11時50分(UTC: 午後3時50分〜午後8時50分)まで設定される。

法的基盤と初日の取扱銘柄・取引形式

今回の新市場開設は、ロシア連邦議会で可決された連邦法第282-FZ号「デジタル通貨およびデジタル権利に関する法律」に基づいて推進されている。

同法案の主要規定は9月に施行されており、段階的な法整備の一制約として市場の公的解禁が進められてきた。初期の取扱対象としては、以下の主要な3銘柄が選定されています。

ビットコイン(Bitcoin/BTC)
イーサリアム(Ethereum/ETH)
テザー(Tether/USDT)

取引モードには、一般的なオーダーブック方式による匿名取引(アドレス非指定型)と、店頭取引(OTC)に近い個別の相手方指定取引(アドレス指定型)の2通りが用意される。決済手段としては当日決済(TOD)および翌日決済(TOM)に対応するほか、市場参加者が流動性を効率的に管理するためのスワップ取引も提供される予定です。将来的には、国内外の多様な金融商品やデジタル資産への対象拡大が計画されている。

個人投資家に対する規制措置と制限事項

市場への参入にあたっては、投資家保護を目的とした厳格な規制ルールが適用される。適格投資家以外の一般投資家(非適格投資家)が取引を行う場合は、事前のテスト合格が義務付けられる。さらに、1つのブローカーを通じた年間の購入限度額は30万ルーブル(約3,700米ドル相当)までに制限される措置が講じられる。

なお、ロシア国内における商品やサービスに対する日常的な支払い手段として暗号資産を利用することは、法律上引き続き全面的に禁止されている。また、個人間での直接送金=P2P取引を禁止する追加条項については、2027年7月からの適用が予定されている。

市場関係者による実務上の課題と今後の展望

今回の公的市場立ち上げに対しては、期待の一方で実務面での懸念も浮上している。同取引所やNCCは米・英・EU(欧州連合)からの経済制裁対象となっているため、国際的な取引流動性をどこまで確保できるかが課題とされている。

ロシアのクロスボーダー決済企業Exved(エクスヴェド)の創業者セルゲイ・メンデレーエフ(Sergey Mendeleev)氏は、法制度上の制約や中央集権的な仲介者の介在によって売値と買値の乖離(かいり)=スプレッドが拡大し、一般的な個人投資家にとっての魅力が乏しくなる可能性を指摘している。

その一方で、既存の貿易構造に新たな選択肢をもたらし、輸出入業者による国際決済の効率化に向けた足がかりになるという見解も示されている。

 

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