42億ドル規模のUSDT出資仮想通貨銀行アンカレッジ・デジタル、17%の従業員削減

アンカレッジ・デジタル、17%の従業員削減

米国の連邦認可を受けているデジタル資産銀行アンカレッジ・デジタル(Anchorage Digital)が、全従業員の約17%にあたるおよそ68名を削減したことが明らかになった。

同社は今年初めにステーブルコイン(USDT)の発行元であるTether(テザー)社から1億ドル(約157.8億円)の大型出資を受け、企業価値が42億ドル(約6,629億円)規模に達したばかりだった。急成長のさなかでの大規模な人員整理は、厳格な規制下にある機関投資家向けの仮想通貨インフラ企業であっても、市場環境の変化や運営コストの最適化圧力とは無縁でいられない現実を浮き彫りにしている。

従業員の17%削減を断行した背景と詳細

ネイサン・マコーリー(Nathan McCauley)CEO(最高経営責任者)が全従業員に向けて通知し、公式に認められた今回のレイオフでは、全スタッフの17%にあたる約68人が対象となった。今年2月の時点で同社の世界規模での従業員数は約400人と伝えられており、今回の組織再編はその規模を縮小させる形となる。

経営陣は今回の決定について、特定の単一事業部門の不振や個別のプロジェクトの失敗によるものではなく、デジタル資産市場全体に広がる低調な業績や、中長期的な運営コスト削減の必要性を主な理由に挙げた。

なお、今回の発表に伴う主要経営幹部の辞任はなく、同CEOも引き続きCEOとして指揮を執る方針だ。一方で、削減対象となった具体的な部署のリストや、今後の詳細な総人員数、退職金条件などの詳細については現時点で明らかにされていない。

Tetherからの1億ドル調達と旺盛な事業拡大

特筆すべき点は、今回の人員削減が巨額の資金調達と事業拡大の直後に行われたという点だ。

2026年2月、最大手の米ドル連動型ステーブルコイン発行元であるTether社は、Anchorage Digitalに対して1億ドルの戦略的株式投資を実行。この出資ラウンドにより、同社の評価額は42億ドル規模へと跳ね上がっていた。

資金調達以降、同社は規制準拠型インフラの構築を加速させており、Tetherの新しいステーブルコイン「USAT」の発行支援や、トークン化された現実資産(RWA)であるウランの保管業務など、最先端の領域へ手を広げていた。安全なデジタル資産の管理や機関投資家向けのコールドウォレット・インフラ提供を中核とする同社にとって、これらは大きな柱となるはずの事業だった。

しかし、積極的な投資と拡大路線の一方で、実際のカストディ手数料や取引収益が当時の事業計画を下回る水準で推移したことが、今回のコスト規律を見直す契機になったと分析されている。

過去の仮想通貨の冬との違いと業界への影響

Anchorage Digitalにとって、人員削減は今回が初めてではなく、市場低迷期であった2023年3月にも、カストディおよび融資事業の収益圧迫を受けて当時の従業員の約20%にあたる75人を解雇している。

前回が文字通りの“仮想通貨の冬”の混乱直後に行われた防衛策であったのに対し、今回はビットコイン(Bitcoin/BTC)価格が歴史的な高値圏から調整しつつも高水準を維持し、市場が一定の回復局面にある中での実施となった。ビットコインは足元で8万ドル台後半を推移しているものの、機関投資家向けのインフラを支える企業は、依然として収益性と持続可能なコスト構造の両立を迫られている。

OCC(米通貨監督庁)から連邦信託銀行の認可を受けた初の暗号資産企業として、TradFi(伝統的金融)とデジタル資産の橋渡し役を担ってきた同社。その動向は、厳格な規制を遵守しながら成長を目指す業界全体の試金石となっている。

今回の構造改革が組織のスリム化による一時的な軌道修正にとどまるのか、あるいはさらなる変革の序章となるのか、今後の発表や人員数の推移に引き続き高い関心が寄せられている。

 

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