トランプ大統領の署名なしでも米住宅関連法案が成立・発効へ
ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領の署名を待たずに、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の発行を禁止する条項を盛り込んだ超党派の住宅関連法案「21st Century ROAD to Housing Act (21世紀住宅への道)」が、自動的に成立・発効する見通しとなった。
米国憲法では、議会の会期中であればホワイトハウスへ送付されてから10日間(日曜日を除く)大統領の署名や拒否権行使がない場合、法案は自動的に成立する。トランプ大統領は同法案への署名を拒否する意向を示していたが、期限を迎えたことで法制化が進むこととなった。
トランプ大統領が署名を拒む理由と政治的抗議
トランプ大統領は自身のSNS「Truth Social」において、法案そのものの内容ではなく、別の法案をめぐる議会への抗議として署名を見送る方針を表明した。
大統領が強く求めているのは、連邦選挙での有権者登録時に米国市民権の証明を義務付けるSAVE America Act(セーブ・アメリカ法案)の可決だ。
トランプ大統領は賛成票を投じた共和党議員を批判する一方で、金曜日の期限までに拒否権を行使することもしていない。仮に拒否権が発動されたとしても、同法案はすでに下院で358対32、上院で85対5という圧倒的な超党派の賛成多数で通過しており、議会による再可決(拒否権の覆し)が確実視されていたため、結果を覆すことは不可能な状況だった。トランプ大統領は次のように投稿している。
私は、議会で完全に承認されホワイトハウスに送られた住宅法案に署名しません。これは、共和党支持者の間で97%の支持を得ており、非政治家の民主党員の…
デジタルドル禁止措置の実際の影響力
本法案の主目的は住宅価格の高騰抑制や規制緩和、大規模機関投資家による住宅所有の制限だが、市場の注目は付随する「CBDC禁止条項」に集まっている。
FRBの権限制限: 連邦準備制度理事会(FRB)および各地区連邦準備銀行が、直接・間接を問わず小売向けのデジタルドルを発行・創出することを2030年末まで禁止。
民間ドルの保護: 現金と同等のプライバシーを確保した「オープンで許可不要(パーミッションレス)の民間米ドル建て通貨」の発行は妨げないことを明記。
主導権の移行: これまでFRBは「議会の承認なしにCBDCを発行しない」としていたが、今回の立法により、今後のデジタルドル議論の主導権が完全に議会へと移る形になった。
もともとFRB(米国連邦準備制度理事会)はCBDC導入に慎重であり、実質的な進展は見せていなかったが、今回初めて法律として禁止が明文化された意義は極めて大きいと言える。
法案成立の背景と仮想通貨市場への余波
この禁止条項は、民間発行のステーブルコイン規制をめぐるGENIUS法案の議論から発展したものだ。共和党議員らは、政府独自のCBDC発行は民間ステーブルコインとの利害衝突や国民の金融プライバシー侵害につながると懸念し、今回の超党派住宅法案に条項を組み込む形で実質的な法制化に成功した。
共同提案者であるエリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)上院議員らは、トランプ大統領の不作為を批判しつつも「法案が成立することは朗報だ」と歓迎。一方で、暗号資産市場には別の懸念も浮上している。大統領が選挙関連法案を理由に重要法案への署名を拒む姿勢を見せたことで、現在議会で審議中のCLARITY Act(デジタル資産市場透明化法案)など、今後の市場構造法案の先行きにも同様の政治的停滞が影響するのではないかと、業界関係者は注視している。
























