無許可取引の監視強化へ国家管理下で規制拡大
ロシア政府は、無許可で行われる仮想通貨取引の取り締まりを強化する方針を示した。
検察庁のアレクサンダー・グツァン(Alexander Gutsan)検事総長は、CIS(独立国家共同体)検事総長協議会の会合で、違法な仮想通貨の流通を組織・運営する個人や団体に対し罰則を設け、取引されたコインを押収・国庫に移管する仕組みを含む法改正が検討されていると述べた。
汚職やテロ資金、麻薬取引などに関連する違法資金の流れを断つことを目的に、監視体制を強化している。
罰則制度整備へ無許可取引の抑止狙う
検察庁は、無許可取引の抑止を目的に罰則制度を新設する。対象は、仮想通貨の違法流通を組織または運営する者で、押収した資産は国家に移管する手続きを設ける方針だ。
ロシアでは2021年にデジタル金融資産法(DFA法)が施行され、仮想通貨を民事・刑事訴訟における財産と認める一方、法定通貨の地位は与えられていない。ロシアの法定通貨であるルーブルが国内で唯一の決済手段とされており、現金引き出しや銀行カードの利用に対する制限措置が取られているものの、規制されていない無許可の取引が依然として行われている。
当局は、銀行カードの利用制限や現金引き出し規制を強化しているが、抑止効果は限定的だ。推計では約2,000万人の国民が仮想通貨を保有し、国内のウォレット残高は約400億ドル(約6兆円)に達している。こうした状況を受け、ロシア政府は罰則導入により法制度の抜け穴を埋め、無許可市場の構造的な是正を図る構えだ。
デジタルルーブル導入で国家主導の経済再編
政府は、国家主導のデジタル通貨であるデジタルルーブルを2026年9月から段階的に導入する予定だ。
商品やサービスの支払いに利用できる唯一のデジタル通貨として設計されており、仮想通貨市場を金融システムに統合する狙いがある。これにより、取引の透明性と追跡性を高め、国家の監督下でデジタル経済を形成する方針だ。
ロシア中央銀行は一般投資家の仮想通貨取引へのアクセスを制限する立場を取る一方、財務省は投資機会の拡大を推進している。両者は2026年までに包括的な投資ルールを整備することを目標としており、特定の企業や投資家を対象に限定的な取引を認める実験的法的制度(ELR)の拡張も検討されている。
ロシア当局は、違法市場の縮小と国家主導の経済基盤構築を同時に進めることで、仮想通貨を含むデジタル資産の流通を完全に監督下に置く体制を確立しようとしている。