ステーブルコイン市場の透明性と利便性を高める新方針
ASIC(オーストラリア証券投資委員会)は、ステーブルコインを流通させる仲介業者に課していた追加ライセンス要件を免除する新制度を導入した。
発行者がAFS(オーストラリア金融サービス)ライセンスのもとで認可されている場合、仲介業者は別途ライセンスを取得する必要がなくなる。これにより二重の手続きが不要となり、コストと時間の負担が軽減され、市場の成長とイノベーションの加速が期待されている。
ASICが中間業者への追加ライセンスを免除
今回の措置はASICが「デジタル資産と決済セクターの成長を促進する重要な一歩」と位置づける初のクラスリリーフである。
対象はAFSライセンスに基づき発行されるステーブルコインに限定され、仲介業者は消費者保護基準を順守しなければならない。また、顧客に商品開示文書を提供し、透明性を確保する義務も課される。
これまで仲介業者は、発行者がすでにライセンスを保有していても追加でライセンスを申請する必要があった。今回の免除により、取引所や決済プラットフォーム、金融スタートアップは参入障壁が下がり、コンプライアンスコストの削減によってブロックチェーンベースのサービス導入が進みやすくなる。Blockchain APACのスティーブ・ヴァラス(Steve Vallas)氏は、発行者が引き続き情報開示と健全性義務を負うため、責任が移転するわけではないと評価した。
AUDMが最初の対象と今後の規制改革の展望
現時点でこの免除の対象となるのはCatena Digitalが発行する豪ドル連動型ステーブルコイン「AUDM」のみである。
仲介業者がAUDMを取り扱う場合は、顧客に商品開示書を提供する義務があり、透明性を確保することが求められる。ASICは、今後新たにAFSライセンスを取得する発行者が現れれば免除対象を拡大するとしている。
この決定は、デジタル資産規制に関する協議で指摘されていた、仲介業者によるライセンス取得の負担や複雑さに対処する狙いも含まれている。ASICは現在、ガイダンス「INFO 225」の改訂を進めており、ステーブルコインや取引所ネイティブトークン、ラップドアセット、さらにはミームコインにまで規制の適用範囲を明確化する方針だ。改訂版は数週間以内に公開され、一般からの意見募集と合わせて運用が始まる見通しである。
さらにオーストラリア財務省は、トークン化や実世界資産、CBDC(中央銀行発行デジタル通貨)を含むデジタル資産政策のホワイトペーパーを発表し、その中で支払ステーブルコインに関する枠組みの整備についてもASICと連携して検討を進めている。
今回の免除は単なる技術的な調整にとどまらず、ステーブルコインを既存の金融システムに統合し、国際的な競争力を強化する狙いもある。米国や香港をはじめ各国で規制整備が進むなか、オーストラリアは明確なルールと発行者監督を軸に市場参加者を引き付ける姿勢を示したといえる。