ルカシェンコ大統領が仮想通貨利用拡大を強調
ベラルーシにおける仮想通貨を用いた対外決済が拡大し、2025年最初の7カ月で17億ドル(約2,501億円)に達した。アレクサンドル・ルカシェンコ(Alexander Lukashenko)大統領は中央銀行と商業銀行の幹部に対し、仮想通貨の活用を一段と広げるよう求めた。
取引は「かつてないほど活発」であり、国家経済のデジタル化に関わる重要分野だと位置づける発言である。専門家の推計によれば、この決済総額は年末までに30億ドル(約4,415億円)に達する可能性がある。
制裁下で広がる仮想通貨決済
EU(欧州連合)と米国の制裁により輸出が縮小する中、企業は代替手段を模索してきた。
大統領は銀行部門の「制御不能な手数料」やリースサービスの規制の不備を課題として挙げ、デジタルトークンの活用による効率化を促した。中央銀行には体制整備を指示し、対外取引を行う企業をあらゆる方法で支援するよう求めた。仮想通貨の利用は仲介者の最小化やスマートコントラクトによる自動執行を通じ、取引コストの低減と管理の強化に資すると説明した。
規制整備とデジタル決済インフラの加速
ベラルーシは2018年に仮想通貨の販売、交換、マイニングを合法化した。近年は監督を強化しており、2024年には国内取引所以外での個人取引を制限する法律を整備した。大統領は透明で効果的な規則の早期確立を重ねて指示している。
国内ではバイナンス)(Binance)、OKX、クーコイン(KuCoin)などの事業者が展開しており、国外向け決済は年末までに倍増する可能性があると同大統領は述べた。
Statistaの推計では、2026年までに同国の仮想通貨ユーザーは85万5,000人を超え、人口の約9.6%に達すると見込まれている。
即時決済とQRコードの導入
デジタル決済基盤の整備も進む。大統領は年末までの即時決済システム導入を目標に掲げ、QRコード決済の普及を後押しする考えを示した。
生体認証や自国IT企業の育成、AI(人工知能)の統合にも言及し、外部依存を抑えたデジタル戦略を志向する。こうした取り組みにより仮想通貨決済の受け皿拡大を図る方針が示され、制裁環境下での資金フロー維持につなげる意図が示された。
一方で、仮想通貨の価格変動や制度運用の練度は引き続き課題である。安定したルールと実行力が伴ってこそ持続的な拡大が可能になる。政府と中央銀行が求める透明性と合理的管理をどこまで実装できるかが、ベラルーシのデジタル金融戦略の成否を分ける。