ビットメイン、世界のビットコイン採掘環境の変化を受け米国初の製造工場を開設予定

ビットメインが米国初の製造工場を開設予定であることを示すイメージ

ビットメインが米国市場での製造拠点設立へ

中国に拠点を置くビットコインマイニング機器大手のビットメイン(Bitmain)は、世界のビットコインマイニング環境の変化を背景に、米国で初となる製造工場を開設する計画を進めている。

新工場は2026年初頭までに半導体の生産を開始し、同年末までの本格稼働を目指す。また2025年第3四半期までに、テキサス州またはフロリダ州に新たな米国本社を設立することも検討している。

ビットメインのグローバル事業責任者アイリーン・ガオ(Irene Gao)氏は、今回の拡張について米国を拠点とする顧客向けの配送や修理サービスを効率化するためと説明。ガオ氏は米国市場でのリーダーシップ獲得を「またとない機会」と表現し、第一段階では製造とメンテナンス業務に注力し、約250人の現地従業員を雇用する予定だと述べている。

世界のマイニング業界が直面する変化と米国進出の背景

ビットコインマイニング業界は規制の強化や電力コストの変動により、主要マイニング地域の勢力図が大きく変わってきた。

ビットメインはアジアを中心とした製造体制を敷いてきたが、こうした環境の変化を受けて製造拠点の多様化を進めている。米国進出は、マイクロBT(MicroBT)やカナン(Canaan)など大手ASICメーカーが相次いで米国に事業を移す動きとも一致しており、ビットメインは米国市場向けの供給力と顧客サービスの強化を図る戦略だ。

新工場の役割と規制リスクの軽減

規制面では、2024年後半にCBP(米国税関・国境警備局)がビットメインのASICユニット数千台を押収した事案があり、これはパートナー企業の中国半導体メーカー厦門SophgoがHuaweiとの関係疑惑で捜査対象となった影響によるものとされる。

押収品は3月から段階的に解放されたが、国境をまたぐサプライチェーンに伴う通関遅延や関税などのリスクが顕在化した。米国内での生産は、こうしたリスクの軽減に資すると位置づけられている。

今後の展望と市場シェア

ビットメイン、マイクロBTカナンの3社は世界のビットコインASIC市場をほぼ独占しており、ケンブリッジ大学が4月に発表したレポートではビットメインのシェアは82%、マイクロBTは15%、カナンは2%と推定されている。

ビットメイン、マイクロBT、カナンなど主要メーカー別のビットコインマイニングハードウェア市場シェアを示すグラフ

出典ケンブリッジデジタル鉱業業界レポート

この図はケンブリッジ大学のデータに基づき、ビットメイン、マイクロBT、カナン、およびその他メーカーのビットコインマイニングハードウェア市場シェアを示したもの。

米国に製造拠点を設立することで、ビットメインは地政学的摩擦の軽減と北米市場での地位強化を狙う。米国製造拠点は配送速度や修理対応時間の短縮につながり、米国のマイナーがハードウェアを入手しやすくなる。今回の製造拠点設立は、米国市場での存在感を高めるだけでなく、世界的なサプライチェーンの安定化にも寄与するだろう。2026年初頭の稼働を目標としており、マイニング業界全体の動向に大きな影響を与える可能性がある。