Dragonfly Capitalの関与がローマン・ストーム裁判で焦点に
DOJ(米国司法省)は、仮想通貨ミキシングサービス「Tornado Cash(トルネード・キャッシュ)」の支援者であるベンチャーキャピタル「Dragonfly Capital(ドラゴンフライ・キャピタル)」の従業員に対し、刑事告訴を検討している。
これは、Tornado Cashの共同創設者ローマン・ストーム(Roman Storm)被告に対する裁判の中で明らかになったもので、検察は被告の違法な資金洗浄への関与を主張している。
Dragonfly幹部への証言要請と第5修正条項の行使
フォックス・ビジネスの記者エレノア・テレット(Eleanor Terrett)氏によると、連邦検察官は7月25日の公判で、Dragonflyのゼネラル・パートナーであるトム・シュミット(Tom Schmidt)氏に対する起訴を現在も検討中であると明言。直後にその発言を封印するよう裁判所に要請した。
🚨NEW from the @rstormsf trial: The DOJ is apparently still considering charges against an unspecified number of people at crypto VC firm @dragonfly_xyz, not just General Partner @tomhschmidt, according to AUSA Rehn.
After saying this in court, Rehn asked for the transcript of… https://t.co/jt1XCCWO0P
— Eleanor Terrett (@EleanorTerrett) July 25, 2025
法廷では、シュミット氏とDragonflyの共同創業者ハシーブ・クレシ(Haseeb Qureshi)氏、そしてTornado Cashの開発者ローマン・ストーム氏らとの間で交わされた電子メールが証拠として提出された。これらのメールには、KYC(顧客確認)手続きの導入に関する相談が記されており、政府が主張する「意図的なマネーロンダリングほう助」とは矛盾する可能性を示している。
一方で検察は、Dragonflyが単なる出資者を超えて、Tornado Cashの運営方針に深く関与していた可能性があると主張しており、この点がシュミット氏に対する訴追検討の根拠とされている。
Tornado Cash側はシュミット氏を証人として召喚しようとしたが、同氏は憲法修正第5条を援用し証言を拒否。自身に不利な証言を強制されることは違憲であると主張した。弁護側は、Dragonflyがアドバイザー的立場にとどまっていたことを証言できれば、開発者らの犯罪意図を否定する材料になると見ていたが、免責を伴う証言強制は実現しなかった。
ベンチャー投資への波及と今後の見通し
今回の裁判は、ベンチャー投資家の責任範囲を巡る新たな議論を呼んでいる。検察が、プロトコルの運用に直接関与していないVCにも責任を問う姿勢を示したことで、今後の投資判断に影響を与える可能性がある。
もし司法省がDragonfly関係者を正式に訴追すれば、プライバシーツールや分散型金融(DeFi)領域へのベンチャー投資に萎縮効果をもたらす恐れがある。技術的意思決定への介入や、論争の多いプロジェクトを敬遠する動きが広がる可能性もある。
一方、ローマン・ストーム被告およびローマン・セミョーノフ(Roman Semenov)被告は、マネーロンダリング(資金洗浄)共謀や制裁違反の罪で起訴されており、最大で40年の懲役刑が科される可能性がある。司法省は、両被告が中立的なインフラ提供者を装いつつ、北朝鮮のハッカー集団「ラザルス・グループ」などを支援していたと主張している。
裁判は今週末に休廷し、来週には最終弁論が予定されている。