仮想通貨デリバティブ市場の覇権争いが激化
米仮想通貨取引所大手コインベース(Coinbase)は、仮想通貨オプション取引の最大手Deribitを29億ドル(約4,200億円)で買収する契約を締結した。
買収は現金と株式を組み合わせたもので、同社にとって過去最大規模の案件となる。取引範囲の拡大とデリバティブ市場での存在感強化を目指す動きとして注目されている。買収は現金7億ドル(約1016.5億円)と同社のクラスA普通株式1,100万株で構成され、木曜日に発表され、株価は発表後、時間外取引で5%上昇した。なお、当初報じられていた40~50億ドル規模の予想を下回る額での決着となった。
Deribitは2024年に取引量1.2兆ドルを記録し、ビットコイン(Bitcoin/BTC)とイーサリアム(Ethereum/ETH)のオプション市場で圧倒的な地位を確立している。米大統領選後の機関投資家の取引増加も後押しとなり、取引量は前年から倍増。今回の買収によって、同社はオプション取引量と建玉残高の両面で仮想通貨デリバティブ市場のトップに立つ見込みだ。市場関係者の中には「お買い得な取引」と評価する声もある。
買収完了には規制承認が必要
Deribitが保有するドバイでのライセンス譲渡に関する規制通知が必要とされており、取引完了には当局の承認が前提条件となる。コインベースは直近の規制対応の進展を背景に、承認取得に自信を示している。
Coinbaseはこれまでスポット取引に注力してきたが、2023年にはバミューダ拠点の取引所を通じてデリバティブ分野への参入を開始している。今回のDeribit買収は、その戦略をさらに加速させるものとなる。過去にもXapo(2019年)、Tagomi(2020年)、One River Digital(2023年)などの買収を通じて、取引サービスや資産管理分野を強化しており、同社は声明の中で次のように述べている。
これは当社のグローバル展開戦略における重要な一歩です。Deribitとの統合により世界中の仮想通貨デリバティブ市場に比類なきアクセスを提供します。
仮想通貨市場全体への波及にも注目
今回の買収は同社の収益構造と競争力の強化に加え、業界全体への波及効果も期待されている。
仮想通貨オプションは、株式市場におけるオプション取引の発展と重ねて語られることも多く、新たな成長領域として注目されており、英国で仮想通貨とAI(人工知能)推進に関する提携を結ぶなど、事業拡大に向けた取り組みも加速させている。さらに、同社はSECへの訴訟棄却後、イーサリアムやリップル(Ripple/XRP)の分類に関するSEC内部文書を情報公開法に基づき開示するなど、積極的な姿勢を見せている。