マスク氏辞任とDOGEの行方
イーロン・マスク(Elon Musk)氏が、トランプ政権下で進めていた政府改革プロジェクト「D.O.G.E.(政府効率化省)」から退く見通しとなった。
DOJ(米国司法省)にはD.O.G.E.に関する内部告発が提出されており、これをきっかけにマスク氏と政界との関係にも変化が生じている。
D.O.G.E.は、マスク氏が主導した政府支出削減プロジェクトで、昨年には「2兆ドル(約289兆円)の削減を目指す」と語っているほか、「2兆ドルを目指したら、1兆ドル(約144兆円)でも達成できる可能性は十分にあると思います」とも述べており、現実的な目標とのバランスを取る姿勢もうかがえた。
一方で、こうした施策の影響により政府内では混乱も生じており、解雇や再雇用の遅れ、有給休暇の混乱、生産性の低下などが重なった結果、今年だけで1,350億ドル(約19.4兆円)近い損害が生じたという推計もある。
任期終了と支援のかたち
マスク氏は「特別政府職員」としてD.O.G.E.を内部から支えてきたが、その任期は5月に終了予定で、本人もフルタイムでの続投を否定。
今後は外部からの支援に回る意向を示している。これによりD.O.G.E.の今後のリーダーシップは不透明となったが、トランプ陣営は「コスト削減の流れは継続する」との姿勢を崩していない。D.O.G.E.の公式サイトでは、こうした取り組みによる削減実績として1,600億ドル(約23兆円)が掲げられている。
一方で、D.O.G.E.が政府財政に一定の効果をもたらしているとの指摘もある。財務省の報告によると、2025年第2四半期の借入必要額は前回予想より530億ドル(約7.6兆円)少なく、税収は前年比微増、支出は歴史的下限に近い水準にある。D.O.G.E.による予算と人員の見直しが影響したと見られ、「財政フローは予想を上回っている」との記述も確認された。
トランプ氏との関係と今後の展望
マスク氏の離脱報道が出た一方で、トランプ前大統領は閣議の場でマスク氏に直接感謝の意を表した。
「多くの犠牲を払ってきた」と称賛されると、マスク氏は「彼らは私の車を燃やすのが好きなようですが、それは良くありません」と応じ、D.O.G.E.発表後に起きた破壊行為を揶揄した。トランプ氏はさらに、「この国の多くの人々があなたを尊敬し、感謝している」と述べ、「好きなだけ滞在して構わない」と語った。この発言に閣僚らは拍手で応じたという。
マスク氏は、テスラ(Tesla)の決算説明会でもD.O.G.E.に関与し続ける意向を示しつつ、「主要な仕事は完了した。来月からはテスラにより多くの時間を割く」と発言。D.O.G.E.への優先度は下がるものの、完全な離脱ではないことも示唆している。
D.O.G.E.をめぐる調査が進展するかは司法省の対応次第だが、マスク氏の動向や今後の改革の進み方が注目される。