コインベース、IRSの仮想通貨データ押収に警鐘 プライバシー保護が争点に

米国最高裁判所の前に置かれた「PRIVACY」と書かれた南京錠とキーボード。デジタル時代のプライバシー保護と司法の関係を象徴。

コインベースが最高裁に意見書を提出

米国の大手仮想通貨取引所コインベース(Coinbase)は、IRS(内国歳入庁)による顧客データの押収が、デジタル時代における個人のプライバシーを侵害するものだとして、連邦最高裁判所に意見書(アミカス・ブリーフ)を提出した。

日本語訳:
第三者原則によれば、自発的に第三者と情報を共有する場合、いかなるプライバシーも合理的に期待できないとされています。本日Coinbaseはこの誤りを正すため、米国最高裁判所にアミカス・ブリーフを提出しました。

この訴訟は、仮想通貨利用者の権利に直結する重大な法的争点として注目を集めている。

コインベースは、2016年にIRSが発行した「ジョン・ドウ召喚状」により、約50万人分の顧客情報の提出を求められたことに強く異議を唱えてきた。最終的に約1万4,000人分の情報を提出することになったが、その過程でCoinbaseのユーザーであるジェームズ・ハーパー(James Harper)氏が、IRSによるデータ取得をプライバシー侵害とみなし訴訟を起こしている。

同氏の意見書にはさらに、「第一巡回区控訴裁の判決がこのまま認められれば、日常的に第三者と情報を共有する多くのアメリカ市民が、修正第4条の保護を失うことになる」との強い懸念も示されている。コインベースは、こうした前例が市民の自由と安心を脅かす危険性を持つと訴え、個人情報の扱いに対する法的枠組みの見直しを求めている。

第三者原則の再考と制度の見直し

コインベースは、今回の訴訟が「第三者原則」の見直しを促す契機となるべきだと主張しており、この原則は、個人が第三者に情報を提供した時点で、その情報に対するプライバシー保護の期待が弱まるとする法的考え方だ。

しかし同社は、現代のインターネットバンキングやクラウドサービス、ブロックチェーンのような技術環境において、この原則が過度に拡大解釈されており、市民が日常的に利用するサービスでプライバシーを自動的に放棄してしまう構造になっていることを問題視している。現代社会に即した法整備の必要性が改めて強調されており、コインベースの最高法務責任者である(Paul Grewal)氏は次のように指摘している。

税務コンプライアンスは重要だが、今回のような過剰なデータ要求は仮想通貨に限らず、銀行、通信、テクノロジー業界など広範な分野に影響を及ぼす可能性がある。

コインベースは、今回の訴訟が連邦最高裁で審理されること自体が、個人情報の取り扱いに対する社会的関心の高まりを示すものであり、ユーザーの信頼を守るための分岐点になるとして、引き続き強く訴えている。この訴訟の判決次第では、仮想通貨業界のみならず、デジタル社会全体のプライバシー保護と法制度のあり方に大きな影響を与えることが予想される。

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2022年1月から仮想通貨を触り始め、みるみるうちにNFTにのめり込んでいった。 現在はWeb3とECの二刀流で生計を立てている 得意なのは喋る事、好きな食べ物はカレー、好きなゲームは格闘ゲーム