タイSECがUSDTとUSDCを承認
タイSEC(タイ証券取引委員会)は、テザー(Tether/USDT)およびUSDコイン(USDCoin/USDC)を現地の仮想通貨取引所で取引可能な資産として承認した。
タイSECは、ビットコイン(Bitcoin/BTC)、イーサリアム(Ethereum/ETH)、リップル(Ripple/XRP)、ステラルーメン(Stellar Lumens/XLM)とともに、USDTとUSDCを承認済み仮想通貨のリストに追加。この規制変更は2月の公聴会を経て決定され、新たなルールは2025年3月16日から施行され、今決定により、国内投資家がより安定したステーブルコインを利用できるようになる。
タイSECの決定により、規制対象の取引所でUSDTとUSDCが正式に上場されることが可能となり、仮想通貨エコシステムの発展が促進される。特にステーブルコインは、取引の利便性向上だけでなく、新興市場において銀行を介さずに送金する手段としても注目されている。
ステーブルコインの役割と成長
USDTとUSDCの承認は、仮想通貨を送金手段として利用する動きを支援する。
特に、新興市場ではステーブルコインを使うことで、従来の銀行送金よりも手数料を大幅に削減できるとされている。ブロックチェーン分析を手掛けるチェイナリシス(Chainalysis)のレポートによれば、ステーブルコインは国境を越えた決済で「変革的な」役割を果たしており、サハラ以南のアフリカ市場では、送金コストを従来の60%削減できると報告されている。また、a16z(Andreessen Horowitz:アンドリーセン・ホロウィッツ)によると、2024年12月のステーブルコイン取引件数は6億件を超え、利用者は2,850万人に達している。
また、DefiLlama(ディーファイラマ)のデータによると、流通供給量ベースでのステーブルコイン市場規模は約2,300億ドル(約34兆円)に達し、USDTがその63%以上を占める。
国際競争と規制の影響
USDTは現在、タイ国内の仮想通貨取引市場で重要なシェアを占めており、タイSECの承認によりさらに市場の拡大が見込まれる。
しかし、国際的にはステーブルコイン市場での競争が激化している。2025年にはペイパルUSD(PayPalUSD/PYUSD)の統合が予定されており、USDTの市場シェアに影響を及ぼす可能性がある。また、EU(欧州連合)のMiCA(仮想通貨市場規制)の適用範囲が厳格化される中、テザー社のUSDTの規制状況にも注目が集まっており、グローバル市場での立場に変化が生じる可能性がある。
タイSECの今回の承認は、東南アジア全体の仮想通貨規制にも影響を与える可能性がある。タイ政府は、仮想通貨アプリケーションのテストを目的とした規制サンドボックスを8月に立ち上げる予定であり、今回の決定もその流れの一環とされている。
今後の展望と東南アジア市場への影響
タイSECの承認により、以下のような市場の変化が予想される。
- 資本流入の増加:USDTとUSDCの承認で、海外投資家の参入が容易になる
- 取引の透明性向上:規制が明確化され、投資家の信頼性が向上
- 新たな金融商品:公式に認められたステーブルコインを活用した新たな投資機会が生まれる
また、バンク・オブ・アメリカのブライアン・モイニハン(Brian Moynihan)CEO(最高経営責任者)氏は「もし合法化されれば、ステーブルコインの提供を開始する」と発言しており、大手金融機関もこの分野に参入しようとしている。
タイの動きは、国内市場だけでなく、東南アジアや世界の仮想通貨市場にも影響を与える重要な一歩となるだろう。