ペイパルが10億ドル相当の仮想通貨保有量を明らかに
オンライン決済サービスを手掛けるペイパル(PayPal)は、SEC(米国証券取引委員会)に提出した最近の四半期業績報告書によると、10億ドル(約1,342億円)相当の仮想通貨保有物を保有していることが明らかになった。
これらの保有資産の内訳は、ビットコイン(Bitcoin/BTC)4億9,900万ドル(約670億円)、イーサリアム(Ethereum/ETH)3億6,200万ドル(約486億円)、ビットコインキャッシュ(BitcoinCash/BCH)およびライトコイン(Litecoin/LTC)8,200万ドル(約110億円)で、2022年第4四半期から30%以上の伸びを示している。
SECに提出された第1四半期の報告書によると、同社は2023年3月31日の時点で、合計9億4,300万ドル(約1265.8億円)の仮想通貨資産を保有していると主張。驚くべきことに、これは、同社が約6億400万ドル(約810億円)の仮想通貨を保有していると報告した前四半期から大幅に増加したものである。
仮想通貨提供を拡大し続けるペイパル
ペイパルは、顧客が仮想通貨を購入、保有、売却、受信、送信し、チェックアウト時に売却代金を使用することを可能にする決済代行業者であり、同社は、仮想通貨の保管・管理について、ジェミニ(Gemini)やコインベースカストディ(Coinbase Custody)などの第三者信託に依存している。
注目すべきは、同社が2021年に米国で仮想通貨サービスを開始して以来、仮想通貨の提供を拡大していることであり、同サービスでは、ユーザーは同社アカウントを通じて直接、仮想通貨を購入、保有、売却できる。一方、ベンモ(Venmo)を所有する決済企業は、実際に仮想通貨を保有しているわけではなく、カストディアル・サービスを提供する他者に依存しているようだ。2013年にペイパルの子会社となったベンモは、ビットコイン、イーサリアム、ライトコイン、ビットコインキャッシュを他人や外部のウォレットに送信でき、ベンモの取引はペイパルのウォレットとも互換性があるが、不可逆的とのこと。
決済プロバイダーはユーザーベース以外にも仮想通貨の普及促進
既存決済プロバイダーは、既存ユーザーベース以外にも仮想通貨の普及を促進できる。
米国のメタマスク(MetaMask)ウォレット保有者は、ペイパルを使って仮想通貨を購入でき、Web3へのユーザーオンボードが容易になり、ペイパルデビットカードユーザーは、コインベースで仮想通貨が購入できるとのことだ。また、決済プロバイダーのストライプ(Stripe)は、仮想通貨企業が不換紙幣で仮想通貨を購入することを可能にし、ゲーマーがウォレットに資金を供給するためのゲーム内ウィジェットを提供している。
さらにグローバル決済サービスを手掛けるマスターカード(Mastercard)も、ブロックチェーンネットワーク上の顧客と企業間の取引を認証するためのインフラと基準を開発。同時に、同じくグローバル決済サービスを手掛けるビザ(Visa)はパブリックブロックチェーン上でのステーブルコイン大量採用促進プロジェクトを発表。そのうえで、P2P決済テクノロジー企業サークル(Circle)と提携し、一部のクレジットカードでUSDコイン(USDCoin/USDC)取引を可能にしている。しかしペイパルは、ニューヨーク規制当局によるパートナーであるパクソス(Paxos)への調査のため、2023年初めにステーブルコイン開発を停止したと報告されている。
ペイパルは、1株当たり調整後利益を1.17ドル(約157円)とし、前年の88セント(約80円)から増加、売上高は10%増の70億ドル(約9,396億円)を記録。しかし、ペイパルは営業利益率の拡大予想を125bpから100bpに引き下げたため、取引終了後に株価は5%下落した。市場アナリストは、同社のチェックアウトボタンがアップルに負けている可能性があり、また高金利により、特に低所得者層の顧客の高額な買い物が抑制されているとみているという。