シンガポール高等裁判所がNFTの売却・譲渡の差し止め命令
シンガポール高等裁判所は5月13日(金曜日)、NFT(非代替性トークン)の潜在的な販売および所有権の譲渡を停止するための裁判所のを差し止めを命じた事が分かった。
今回の差し止め命令は、世界初の命令と言われている。NFTは、ブロックチェーンと呼ばれる分散型デジタル元帳に存在するトークンで、これらは、アートワークやビデオ、音楽など、デジタルまたは物理的な原資産を表すために使用できる。高等裁判所の差し止め命令は、シンガポール人男性が「chefpierre」という名前のオンラインペルソナから取り戻そうとしているBAYC(Bored Ape Yacht Club)NFTを保護している。
BAYCはNFTの限定コレクションであり、それぞれが顔の表情、衣類、アクセサリーなどの独特の属性を持つ類人猿を特徴としている。こらは非常に切望されたステータスシンボルとして見なされており、カナダの歌手ジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)氏など、著名・有名人が所有している事でも広く知られている。
NFTを担保に多くの仮想通貨ローンを借り入れ
男性の身元は裁判所の文書で編集されているものの、シンガポール裁判所の公式サイトの検索でジャニッシュ・ラジクマール(Janesh Rajkumar)氏であることが記されている。
ただし、「chefpierre」の身元については、裁判所の文書と公式サイトの両方で不明と記載されている。ラジクマール氏は、「chefpierre」からのローンの担保として使用していたBAYCNo.2162として知られるNFTを取り戻すことを目指しており、自分こそがNFTの正当な所有者であり、「chefpierre」が不当に奪ったと主張している。同氏は声明の中で、トークンを自分のために保持する意図で以前にNFTを購入したと述べている。
裁判所の文書によると、同氏はNFTを担保として多くの仮想通貨ローンを借り入れ、返済することに成功。2022年1月6日に「chefpierre」からローンを借り、その後返済。同氏は通常、NFTfiのシステムで上位にランク付けされた評判の良い貸し手のみを扱っていたが、オンラインペルソナはローンに有利な条件を提供する用意があり、評判の良い貸し手のように見え、トークンとかなりの金額を持っていたため、「chefpierre」と取引することにしたという。
彼はその後、3月19日に「chefpierre」と別のローン契約を締結したが、その後、借りた金額を返済するための期間の延長を要求。両当事者は3度目のローン条件について話し合い始め、最終的には3月19日のローンの借り換えを提案する「chefpierre」につながり、同氏は同意したとのこと。
しかし、「chefpierre」はその後、Janesh氏に追加の金額を貸すことを拒否し、3月19日のローンが4月21日の午前5時までに全額返済されなかった場合、「差し押さえ」オプションを使用してBAYCNo.2162を差し押さえると脅迫。これにより、同氏はローンの返済に7時間弱かかったものの、最終的には返済に失敗。その結果、「chefpierre」がBAYCNo.2162の所有権を取得することになったという。同氏は後にローンの一部を返済したが、「chefpierre」はその金額を返済し、同氏がそれ以上返済するのを阻止したとのこと。
ラジクマール氏を弁護している法律事務所WithersKhattarWongは、5月18日に発行されたプレスリリースで、高等裁判所の差し止め命令はNFTを資産として認めていると述べている。