IBMと東大、量子コンピュータで連携発表

IBMと東大、量子コンピュータで連携発表

東京大と日本IBMが19日、次世代計算機の量子コンピュータに関するパートナーシップを締結した。東京大学内に量子コンピュータのハードウェアを含む世界初の技術センターを開発し、IBMが所有する量子コンピュータ「IBM Q System One」をアジアで初めて設置する。2020年内の開設を目指す。

従来にない計算パワーをもたらす可能性を秘めた量子コンピュータは、スーパーコンピュータをしのぐ計算性能を持つとされ、薬の開発や金融、物流など幅広い分野での活用が見込まれる。量子コンピュータを巡っては今年10月、米グーグルがスーパーコンピュータを超える「量子超越」を実証したことで、仮想通貨の基盤となる暗号技術を超えるのではないかと反響を読んでいる。

今回の東大とIBMのパートナーシップは、同日に東大が発表し、主導する「東京大学イニシアチブ構想」の一環。同構想は、国内外の企業や研究機関と協力して量子コンピュータに関する知見を集め、同コンピュータの性能をさらに引き上げる部品の協力などで連携する。

Google発表の量子コンピューターを警戒|FUDによる仮想通貨市場は全面安

2019.10.25

日本で量子コンピュータの実証実験

今回設置する量子コンピュータの日本の設置拠点は2カ所。IBMは、量子コンピュータをクラウド経由でアクセスを可能にしているが、今回の提携では、ハードウェア自体を国内に持ち込むことで、日本での開発を加速させる。持ち込む量子コンピュータは幅広い計算に利用できる「ゲート方式」と呼ぶタイプで、本命と呼ばれる商用の同方式の量子コンピュータが日本に初上陸することになる。IBMのコンピュータが設置される国としては、日本が、米国とドイツに続き3番目となる。

本郷キャンパスは、量子ハードウェアなどの技術開発を行うための「量子システム技術センター」を開設する予定。キャンパス内に研究交流スペースを開設し、学業、産業界、教職員の研究者が参加する量子コンピュータ関連のセミナーなどを開催する。

東京大の五神真総長は、今回のパートナシップの意義を次のように述べている。

「知識集約型社会への変革が人類にとってより良い社会をもたらすには、DFFT(Data Free Flow with Trust)を実現し、実空間とサイバー空間が高度に結合したグローバルコモンズ(=地球の資源と生態系を包含した概念)を持続可能かつ信頼できるものとすることが必要だ。そのために、量子技術は最も重要な未来技術の一つです。量子コンピュータの商用利用を先導しているIBMと幅広い連携の枠組みを作ることで、基礎研究にとどまることなく利用技術につながる研究開発体制を我が国に一気に備えることができるとともに、それを担う人材育成を進める上でも大きな意義があると考えている」