「仮想通貨取引所は12か月以内に顧客データを共有しなければならない」=FATF
2019年6月21日、Financial Action Task Force(FATF)は仮想通貨サービスプロバイダー(VASP)に対し、リスクベースアプローチ(RBA)を講じるためのガイダンスを提供した。
ガイダンスの背景には、2013年に闇サイト「シルクロード」がFBIに摘発されて以降も、送金スピードの速さ・匿名性の高さから、仮想通貨は犯罪の温床となっており、MoneroやDASHのように、匿名性が強化された仮想通貨の存在も懸念されいる。
FATFはこれ以上の悪用増加を防ぎ、監視を強化するため、厳しい基準を設けることを発表したのだ。
FATFは、マネーロンダリング・テロリストの資金調達・大量の破壊兵器購入など、犯罪絡みの資金対策を行う政府間機関。VASPは、仮想通貨の交換や送金、ウォレットなどのサービスを提供する法人または自然人。取引所は私たちに最もなじみ深いVASP。RBAとは、マネーロンダリングなどを防ぐためにVASPが取るべき対策のこと。
ガイダンスの内容
59Pにも及ぶガイダンスの中から、私たちに関係のある内容は以下の通りである。
- VASPは出金者の情報を共有しなければいけない
- 出金元となるVASPは、出金者と受取人の情報を送金先となるVASPに伝えないといけない
- 情報には、出金者の名前・口座番号・顧客識別番号・所在地・国民識別番号・生年月日、受取人の名前・口座番号…が含まれる
- 仮想通貨の送金額が1,000USDを超える場合、取引所が犯罪に悪用されないよう、出金者と受取人の身元確認が行われる(名前・公開鍵・取引金額・取引日などの情報もやり取りされる)
- 疑わしいユーザーの継続的な監視
- VASPは過去5年分の取引記録を保管し、疑わしい取引はすべて報告する
そしてこれらの規制は、今後12ヵ月以内、2020年6月までに実行されるべきであるとこちらの文書に記されている。
実行されると不安な面も…
真っ先に挙げられる問題点は、取引所から出金する際の確認作業に時間がかかってしまうことである。
1年後までにすべての仮想通貨取引所が、すべての顧客情報を共有しないといけないが、膨大なデータを安全に管理することがはたして可能なのかが疑問視されている状況だ。
また、送金時の確認作業に人員が割かれることで、取引所のサービスが低下する可能性もある。来年以降、規模の小さい取引所は生き残りに苦労する可能性が出てきた。