バイナンス創業者CZ氏とイーロン・マスク氏、スペースX株やバイナンスハッキング事件を巡る対立・脅迫疑惑に釈明

バイナンス巨額ハッキング騒動とイーロン・マスク氏とのSNS上の応酬

暗号資産取引所バイナンス(Binance)に関連するウォレットから、史上最大規模となる約64億ドル(約1兆円)相当の暗号資産が流出する大規模なセキュリティ侵害事件が発生した。

ブロックチェーン分析企業の報告では、この件への関与が疑われる実行犯として北朝鮮のハッカー集団TraderTraitor(トレイダートレイター)の名が挙げられている。

この未曽有の被害に対し、実業家のイーロン・マスク(Elon Musk)氏がX上で「Everyday is Zeroday(毎日がゼロデイ)」という言葉や嘲笑的な絵文字を添えて反応したことが、今回の騒動の大きな引き金となった。この投稿は、2022年に経営破綻した取引所FTXが破綻直前に顧客資金の安全性を強調していた事例を連想させ、バイナンスの財務健全性に対する疑念をSNS上で拡散させる結果となった。

日本語訳:
兄さん、君が僕たちを愛していて、いつも支えてくれるのは分かってる。でも、君はこの件を悪い方向に過剰解釈しすぎだよ。私は決して「SPCX株を売る」とは言ってない。スレッドでのFTXの比較が、僕たちに資金がないように思わせるかもしれないから、僕たちがそれを持っている…

これに対し、バイナンスの共同創業者であるCZことジャオ・チャンポン(趙長鵬:Zhao Changpeng)氏は反論を展開。「今はからかっている場合ではない」と不快感を示し、かつてマスク氏によるTwitter買収を支援するために投じた5億ドル(約788.7億円)が、現在では10億ドル(約1,577.5億円)以上の価値を持つSpaceX株式として同社に保有されている事実に言及した。

バイナンスが暗号資産以外の多様な資金力を有していることを提示し、FTXのような資金難に陥っていないことを明確に証明する狙いがあった。

SpaceX株を巡る脅迫疑惑の否定とバイナンスの財務戦略

しかし、CZ氏が10億ドル規模のSpaceX株に触れたことで、暗号資産市場や投資家の間では「バイナンスがハッキング被害の巨額な補填(清算)のためにSpaceX株を売却し、マスク氏に圧力をかけようとしているのではないか」という新たな懸念と憶測が広がった。

これを受けてCZ氏は2026年10月31日(土曜日)、X上で「売却するとは一言も言っていない」「私は脅しなどかけない」と投稿し、一部で囁かれた脅迫疑惑や売却計画を強く否定。同氏は、SpaceXへの投資を「最高の長期投資先の一つ」と評し、同社におけるバイナンスの持分は全体から見ればごく一部に過ぎないと説明。情報開示の目的はあくまでFTXとの比較による風評被害を防ぎ、同社の十分な資金力と財務基盤を示すためであったと釈明した。

また、バイナンスの共同CEOであるイー・ヒー(Yi He)氏も議論に加わり、バイナンスの年間収益だけで今回のセキュリティ侵害による損失をカバーするのに十分な金額に達していると発表した。

同社は凍結資産やユーザー保護基金(SAFU)、自社保有のトークンなどをフル活用して被害を受けた顧客への全額補償を進めており、財務上の理由からSpaceX株を売却・清算する必要性は現時点で一切存在しないとの見解を表明している。

最終的にCZ氏は、マスク氏を「世界で最も強力な構築者」と称えて敬意を表しつつ、不必要な対立を避けて本来解決すべき課題である「北朝鮮のハッカー集団への対策」に焦点を当てるよう呼びかけた。経営陣による一連の迅速な釈明により、バイナンスの財務回復戦略においてSpaceX株が売却対象に含まれていないことが明確化され、市場の混乱は沈静化へと向かっている。