英国の元ユーザーがBitMEXを提訴
暗号資産デリバティブ取引所BitMEX(ビットメックス)の運営会社であるHDR Global Trading Limited(HDRグローバル・トレーディング・リミテッド)が、英国のソフトウェアエンジニアであるルイス・バーバー(Lewis Barber)氏から、ロンドンの高等法院(High Court)にて損害賠償請求訴訟を起こされた。
原告であるバーバー氏は、2018年から2022年にかけて同取引所で実施した2,000件以上の取引のうち、損失の出た1,053件(計324.8 BTC)について異議を申し立てている。
このビットコインの価値は、2,000万ポンド(約42億円以上)に相当する。原告側は、暗号資産デリバティブ取引で発生した損失の返還、あるいは同等の補償金を要求している。
無許可営業と金融法違反の指摘
今回の訴訟で最大の焦点となっているのは、BitMEXが英国でサービスを提供していた際の規制遵守状況である。
原告弁護団の法律事務所Seladore Legal(セラドア・リーガル)は、取引所が提供していた無期限先物(パーペチュアル・スワップ)などのレバレッジ商品は規制対象の金融サービスであり、FCA(英国金融行動監視機構)からの認可を受けていなかったと主張している。
原告側は2000年金融サービス・市場法(Financial Services and Markets Act 2000)に基づき、認可を得ずに行われた規制対象ビジネスにおける取引契約は法的強制力を持たない(無効または執行不能)と指摘。
さらに、FCAが2020年3月に「BitMEXが無許可で規制対象の投資取引を行っている可能性がある」と警告。2019年に英大手紙『ザ・タイムズ』へ広告を掲載するなど英国で無許可の宣伝活動を行っていた点を挙げ、顧客に対して合法的取引であるかのように装った「詐欺的行為」があったとも主張している。
BitMEX側の現状と集団訴訟へ発展の可能性
訴訟の報告に対し、BitMEXの広報担当者は「HDR Global Trading Limitedに対し、正式な訴状の送達は行われていない」とコメントしており、認可違反に対する認否については言及を避けている。なお、BitMEXは事業戦略の見直しの一環として、2026年9月23日に取引所サービスを自主閉鎖しているが、閉鎖後も法人に対する法的請求権は残存する。
原告代理人のガレス・ケイラー(Gareth Keillor)弁護士は、英国にはバーバー氏と同様の未承認契約を結ばされた投資家が多数存在する可能性を示唆した。今後の裁判の展開次第では、他顧客による同様の請求が相次ぎ、賠償責任の総額が数億ポンド(数億ドル規模)に膨れ上がる可能性も浮上している。
米国での法的トラブルと創業者らの動向
BitMEXとその経営陣は、今回の英国での訴訟以前から国際的な法的追及に直面してきた。2024年に同社は適切なAML(マネーロンダリング防止)およびKYC(顧客確認)体制を怠っていたとして米国のKYC(銀行秘密法)違反で有罪を認め、2025年1月には1億ドル(約158億円)の罰金支払いを命じられている。
また、共同創業者であるアーサー・ヘイズ(Arthur Hayes)氏、ベン・デロ(Ben Delo)氏、サミュエル・リード(Samuel Reed)氏の3名は2022年に銀行秘密法違反の罪を認めたものの、2025年3月にドナルド・トランプ(Donald Trump)米国大統領から恩赦を受けた。なお、創業者の一人であるベン・デロ氏は、英国の政党リフォームUKに政治史上最大規模となる3,600万ポンド(約75.5億円)を寄付したことでも話題を呼んでいた。
BitMEXは現在、ニューヨークでもビットコインの不正取得やインサイダー取引に関する集団訴訟を抱えており、英米の双方で重大な法的局面を迎えている。
























