オーストラリア、2027年のライセンス制度導入に向け暗号資産プラットフォームの規制強化案を提示・意見募集を開始

オーストラリアASICがプラットフォーム事業者に対する規制強化へ

オーストラリアの金融規制機関であるASIC(オーストラリア証券投資委員会)は、暗号資産プラットフォーム事業者に対する包括的な規制強化策を提示し、意見公募(パブリック・コンサルテーション)を開始した。

この措置は、今年4月に連邦議会で可決された2026年会社法改正(デジタル資産枠組み)法に基づくものであり、2027年4月に施行が予定されている新制度の導入準備として進められている。

ASICが示す規制の全体像と3つの主要理念

今回の規制案は「コンサルテーション・ペーパー392(CP 392)」として取りまとめられた。ASICのアラン・カークランド(Alan Kirkland)委員は「同じ活動、同じリスク、同じ規制上の結果」という原則を掲げ、国際的な規制水準との調和を重視するアプローチを示している。

具体的には、以下の3つの柱を中心に制度設計が進められている。

顧客資産の防護(セキュリティ):
プラットフォームが経営破綻などの事態に直面した場合でも顧客資産を守るため、資金の分別管理や厳格な保管基準を適用する。
公平かつ透明な取引体制:
市場操作や不正取引の抑止をはじめ、事業者の利益相反を防ぐための取引ルールを明確化。
事業者の財務的健全性:
サービス形態に応じた自己資本要件を設定し、予期せぬリスクに対する耐性を高める。

利益相反の抑制と自己勘定取引の制限

今回の提案で大きな焦点となっているのが、取引所と関連会社による「自己勘定取引」の規制だ。

従来、プラットフォーム運営とマーケットメイク(市場への流動性供給)を同一の企業グループ内で並行して行うケースが多く見られた。しかし、新たな枠組みでは顧客の注文を仲介・照合する事業者やその関連法人が、自社プラットフォーム上で直接取引を行うことが制限される見込みだ。これにより、ユーザーの利益とプラットフォーム側の事業上の利益が対立する「利益相反」のリスクを抑え込む狙いがある。

ただし、事業モデルに応じた一部の例外措置も用意されており、すべての自己取引が一律で禁止されるわけではない。各事業者は自社の取引モデルが新基準に適合するか精査を迫られる。

資本要件の厳格化とカストディ(資産保管)管理

財務基盤の強化に向け、ASICは3通りの資本モデルを提示している。特に、適切な第三者カストディ体制を導入していない事業者に対しては、最大1,400万豪ドル(約15.3億円)または平均収益の10%のいずれか高い方の純有形資産(NTA)の保有を義務付ける案が盛り込まれた。

さらに、カストディ管理における主な要求事項は以下の通りだ。

顧客資産の分別管理:自社資金と顧客資産の完全な分離。
ウォレット情報の透明化:使用するすべてのウォレットアドレスや構造の管理と、四半期ごとのASICへのレポート提出。
記録保持:関連する全ての取引および資産記録の7年間保存。

また、暗号資産のグローバルな特性を考慮し、海外の関連機関や第三者による資産保管も容認される。一方で、海外の親会社や提携先が破綻した際に、国内の事業者が資産動かすための秘密鍵へ緊急アクセスできる権限をいかに確保するかといった課題について、業界からの意見を求めている。

業界への影響と2027年までの実施ロードマップ

厳格な基準の導入は、暗号資産業界の構造変化を促す可能性がある。すでにコンプライアンスやカストディ基盤へ資金を投じてきた大手事業者からは歓迎の声が上がっている一方、資金力に乏しい小規模事業者にとっては、対応コストの急増が大きな負担となる懸念がある。その結果、業界内でのM&A(合併・買収)や大手による事業買収を通じた市場統合が進むとの見方も出ている。

今後スケジュールは以下のように進行する予定です。

2026年11月27日:パブリックコメント(意見公募)の締め切り
2027年3月:最終ガイダンスおよび基準の公表
2027年4月8日:新規制枠組みの施行
2027年10月7日:既存事業者による金融サービス・ライセンス(AFSライセンス)申請の最終期限

既存の事業者は、2027年10月までにライセンス申請を行えば、ASICによる審査期間中も事業の継続が認められる猶予措置=移行期間が設定されている。長期にわたる議論を経て、オーストラリアにおける暗号資産規制はいよいよ具現化のフェーズへと移行している。

 

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