Paywardがビットコイン市場向け24時間ドル決済を開始
暗号資産取引所Kraken(クラーケン)の親会社であるPayward(ペイワード)は、シンガポールおよび湾岸地域を拠点に展開するSGB (Singapore Gulf Bank)との戦略的提携を発表した。
今回の提携により、SGBが提供するリアルタイム・クリアリングネットワーク「SGB Net」がPaywardのシステムに統合され、ビットコイン(Bitcoin/BTC)市場をはじめとする機関投資家向けに、土日・祝日を問わず24時間365日対応の米ドル建て即時決済サービスが導入されることになった。
24時間稼働する暗号資産市場と伝統的金融のギャップ解消
ビットコイン市場などのデジタル資産取引は週末や夜間を問わず世界中で常時行われている一方で、決済を担う伝統的な銀行業務は営業時間や休業日に大きく縛られてきた。この構造的なタイムラグは暗号資産企業や機関投資家にとって長年のボトルネックとなっており、市場が大きく変動する中でも銀行窓口の再開を待たなければ資金移動ができないという課題を抱えていた。
Paywardのマーク・グリーンバーグ(Mark Greenberg)CCO(最高商務責任者)は、取引所や決済プロバイダー、OTC(店頭取引)デスク、フィンテック企業がすべて同一の銀行業務上の制約に直面していると指摘している。
今回のSGB Net統合は、こうした市場の動きと決済停止のギャップを埋めるための重要な一手となる。
SGB Net統合の仕組みと今後の展開
バーレーン中央銀行の規制下にあるSGBが運営するSGB Netは、リアルタイム多通貨決済ネットワークとして2025年にサービスを開始し、現在では月間200億ドル(約3.15兆円)以上の法定通貨取引を処理する規模へと急成長を遂げている。
今回の初期展開においては、アジアおよび湾岸地域の特定の機関投資家グループを対象に米ドル建て取引からスタートする計画で、今後は段階的に対応する顧客層や通貨の種類を拡大していく方針が示されている。この仕組みにより、トレーダーは週末のレバレッジ取引やマージンコールに対しても、翌営業日を待つことなく即座に現物注文や先物取引へ資金を投入できるようになる。
相互協力による流動性確保と金融インフラの強化
今回の提携は片方向のサービス提供にとどまらない。SGB側も流動性を安定的に確保する目的で、PaywardのプライムブローカレッジサービスであるKraken Prime(クラーケンプライム)と提携している。さらに、SGBは今後数カ月のうちに、自社顧客向け取引の価格設定を行う際にもPaywardが持つ市場データを活用する予定だ。
Paywardはこの統合を、同社が推進するPayward Banking(プラットフォームの資金基盤構築)の一環として位置づけており、取引、資産管理、決済、銀行業務の各レイヤーを統合管理する戦略をさらに加速させていく構えだ。
また、大手金融機関であるBNY(バンク・オブ・ニューヨーク・メロン)がデジタル資産や決済インフラをめぐりPaywardと協議を行っているとの報道もあり、同社の今後の銀行パートナー拡大の動きには業界内外から高い関心が集まっている。
高まる24時間決済ニーズと業界全体への影響
金融業界全体を見渡すと、決済スピードの向上と営業時間外への対応は世界的なトレンドとなりつつある。
JPMorgan Chase & Co.(JPモルガン・チェース)やBoA(Bank of America:バンク・オブ・アメリカ)、Barclays(バークレイズ)などのコンソーシアムが2027年前半のトークン化預金ネットワーク立ち上げを計画、日本国内でもCircle(サークル)と野村證券による即時為替決済サービスの準備、韓国銀行による外国人投資家向けのウォン取引パイロットプロジェクトの発表など、類似の取り組みが相次いでいる。
既存の金融機関と暗号資産企業の間で、取引時間と銀行営業時間のギャップは避けられないものではなく克服すべき課題であるという認識が共有されつつあるなか、PaywardとSGBの取り組みは今後の機関投資家向け暗号資産市場における新たな標準モデルを提示するものとなりそうだ。
























