盗難USDCの焼却・再発行を巡る泥沼の法廷闘争
ステーブルコイン大手サークル(Circle)社が、詐欺被害に遭った暗号資産USDCの回収命令を巡り、米国ウィスコンシン州検察から刑事侮辱罪で告訴されるという異例の事態に発展している。
BREAKING: Wisconsin prosecutors filed a criminal contempt complaint against Circle after it declined to burn and reissue 381,235 USDC.
Circle froze the scam victims’ tokens immediately under an August court order; it says it cannot invalidate and reissue USDC held in third-party… pic.twitter.com/UaY1kRZCvp
— MSB Intel (@MSBIntel) July 9, 2026
速報:ウィスコンシン州の検察当局は、Circleが381,235 USDCの焼却と再発行を拒否したことを受け、Circleを刑事侮辱罪で告発した。Circleは8月の裁判所命令に基づき、詐欺被害者のトークンを即座に凍結した。同社は、第三者のウォレットに保管されているUSDCを無効化して再発行することはできないとしている。
法執行機関が被害回復のために「スマートコントラクトの強制書き換え」を求める一方、企業側は「技術的に不可能」と突っぱねており、Web3の規制と技術的限界を占う重要な試金石として注目を集めている。
事の発端は、ウィスコンシン州在住の男性がテレグラム(Telegram)を通じた「豚肉屠殺詐欺(※信頼関係を築いてから投資へ誘導する詐欺)」に遭い、約38万1,000USDCを失った事件だ。
2025年8月、裁判所の令状に基づき同社は該当の自己管理型ウォレットをブロックリストに登録し、資金の移動を阻止=凍結=をした。しかし、検察側はそれだけに留まらず、同社に対して「凍結されたトークンを焼却(バーン)し、保安官事務所のウォレットへ再発行(リイシュー)すること」、または「同額の現金での賠償」を求める2度目の命令を突きつけた。
しかし、同社がこれに応じなかったため、検察側は「裁判所の命令への意図的な不服従」として刑事侮辱罪での告訴に踏み切った。
Circle社の主張は技術的制約と準備金モデルへの脅威
Circle社は、この訴えを「根拠なし」として裁判の却下を求めた。同社は、自社が外部ウォレットの秘密鍵を管理していないため、第三者の資産を一方的に破棄・移動させる「技術的能力がない」と主張。
ブロックリストによる凍結はできても、パブリックブロックチェーン上の所有権そのものを書き換える権限は持ち合わせていないと説明しているためだ。
さらに、オンチェーンに元のトークンが残ったまま代替のUSDCを発行したり現金補償を行ったりすれば、同一の資産を二重に裏付けることになり、ステーブルコインの根幹である「1対1の準備金モデル」が崩壊するリスクも指摘。管轄権の欠如を訴えるとともに、DOJ(司法省)と連携した連邦レベルでの正規の資産没収手続きを模索していると弁明した。
検察・調査機関の不満:コードの更新で可能と利息ビジネスへの疑念
一方で、法執行機関や暗号資産調査業界からの視線は冷ややかだ。
暗号資産追跡会社Cryptoforensic Investigators(クリプトフォレンジック・インベスティゲーターズ)は国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に対し、「Circle社はスマートコントラクトのコードを更新すれば対応可能だ」と指摘。過去の裁判資料の脚注からも、同社が事実上「バーン・アンド・リイシュー」のプロセスを承認していた形跡があると主張している。
また、ニューヨーク州の検察官が議会に送った書簡では、Circle社が強制力のある法的措置がない限り資産凍結や捜査協力を拒む姿勢が強く批判されている。書簡内では、同社が「資金を凍結したまま被害者へ返還しない方が、原資産の運用利息を稼ぎ続けられるため経済的に有利なのではないか」という手厳しい疑念まで投げかけられた。
ステーブルコインの未来を左右する法的試金石
著名チェイサーのZachXBT氏らからもハッキング事件への対応の遅さを非難されるなど、風当たりが強まるCircle社。ブロックチェーンの研究者によれば、現在すでに1億1,900万USDCものトークンが凍結状態にあるとされている。
この訴訟は、裁判所が「ブロックチェーンのアーキテクチャが本来想定していない行為」を民間企業に強制できるのかという、司法権の限界を問う極めて重要な裁判となる。判決次第では、今後のステーブルコインの運用ルールや、暗号資産ハッキング被害における法執行機関の差し押さえ手続きが根底から覆る可能性がある。
























