ヴィタリック・ブテリンがZcashのトークン投票導入に強い警鐘

ヴィタリック・ブテリンがZcashのトークン投票に警告を示す様子を描いたイラスト

ブテリン氏がZcashトークン投票の導入に強い懸念を示した

イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏が、プライバシー重視の仮想通貨ジーキャッシュ(Zcash/ZEC)におけるトークンベースの投票制度について警告を発した。

トークン加重の仕組みは短期的な価格インセンティブを優先させ、Zcashが守ろうとしてきた市民的自由を長期的に損なう可能性があると指摘している。

トークン投票がもたらす構造的なリスク

Zcashコミュニティでは、助成金を審査・承認するZCG(Zcashコミュニティ助成金委員会)のあり方を巡り、今後のガバナンス設計が重要な論点となっている。

こうした議論が進む中、ブテリン氏は2025年11月30日(日曜日)にXへ投稿し、トークン投票の採用に反対する立場を明確にした。同氏は、トークン投票には票の買収が密かに成立しやすい構造があることや、大口保有者へ影響力が集中すること、小規模保有者の動機付けが弱まり意思決定が偏ることなど、根本的な脆弱性があると指摘した。特にZcashの中核にあるプライバシー保護について「中間層のトークン保有者に委ねれば時間とともに侵食される」と警告し、現行の委員会制度よりも不安定な結果を招く可能性を示した。

この投稿はコミュニティ内で大きな反響を呼び、Zcashがどのような形でガバナンスを進化させるべきかという論点をさらに加速させた。

委員会と市場原理のあいだで揺れるZcashガバナンス

Helius(ヘリウス)のCEO(最高経営責任者)でZcash支持者のメルト・ムムタズ(Mert Mumtaz)氏は、今回の議論を「仮想通貨プロジェクト全体に共通する課題」と捉えている。

市場には誤った判断を修正する自然なメカニズムがある一方、委員会はフィードバックが働きにくく、構造的な硬直性を抱えやすいと述べた。

一方で、オンチェーン投票にも大口保有者の影響が強まるリスクや、投票者の無関心といった課題があるとの指摘もコミュニティから上がっている。Zcash創設者のZooko(ズーコ)氏は、現在の委員会制度は長年の議論と試行錯誤によって成熟してきたとしつつ、助成金申請の急増やZECの価格上昇など、環境変化への対応が求められていると述べた。

オンチェーンと委員会の役割を巡る見解の整理

議論の焦点は「誰が意思決定のリスクを負うべきか」という点にある。オンチェーンは透明性と即応性を持つ一方、資本の偏在による影響が強まりやすい。委員会は専門性と継続性を備えるが、停滞を避けるためのアップデートが欠かせない。

ZECはここ数カ月で急激な値動きを見せており、市場環境の変化がガバナンス論争をいっそう複雑にしている。今回の議論は、Zcashが掲げるプライバシーの理念と市場原理の折り合いをどうつけるかという本質的な問いを突きつけている。ブテリン氏の発言はその議論を大きく後押しし、Zcashコミュニティの今後の選択が注目されている。

 

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2022年1月から仮想通貨を触り始め、みるみるうちにNFTにのめり込んでいった。 現在はWeb3とECの二刀流で生計を立てている 得意なのは喋る事、好きな食べ物はカレー、好きなゲームは格闘ゲーム