インド高等裁判所が「仮想通貨は財産」と認定

インド高等裁判所の建物と仮想通貨を象徴するコインと天秤のイラスト

インド法における仮想通貨の法的位置づけが明確化される

インドのマドラス高等裁判所は、仮想通貨がインド法上「財産」として認められるとの判断を示した。

判決を担当したN・アナンド・ベンカテシュ(N Anand Venkatesh)判事は、仮想通貨は有形物でも法定通貨でもないものの、識別可能で譲渡が可能であり、秘密鍵によって管理されるという点で財産の主要な特徴を備えていると述べた。これにより、仮想通貨は信託財産として所有・管理され得る資産であることが明確になった。

判決の根拠と背景にあるWazirXハッキング事件

ベンカテシュ判事は、仮想通貨は単なる投機の対象として扱われるものではなく、所有および信託保管が可能な財産であると強調した。

1961年所得税法第2条(47A)でも、仮想通貨は「仮想デジタル資産」として法的に認識されている。今回の判断は、仮想通貨取引所WazirX(ワジールX)へのサイバー攻撃を背景としている。投資家は2024年1月に3,532.30 XRPを保有していたが、同年7月にWazirXがハッキングを受け、イーサリアム(Ethereum/ETH)およびERC-20トークンで2億3,000万ドル(約350億円)超の損害が発生したことによりアカウントが凍結された。この投資家は、自身が保有するXRPは被害対象となったERC-20トークンとは異なる資産であると主張し、仲裁調停法第9条に基づき保護を求めた。

WazirXぼ運営会社Zanmai Labsは、シンガポールの裁判所命令に基づき損失分担措置を実施していると主張したが、裁判所はこれを退けた。ハッキングの対象となったのはERC-20トークンであり、投資家が保有していたXRPは別の資産であると認められたためである。

財産認定が取引所運営と投資家保護にもたらす影響

裁判所は、仲裁手続きがシンガポールで行われていたとしても、インド国内に存在する資産の保護権限はインドの裁判所が有すると判断した。

取引がチェンナイで行われ、インドの銀行口座が使用されていたことから、本件はマドラス高等裁判所の管轄に属すると整理された。また、Zanmai LabsがFIU(Financial Intelligence Unit:金融情報機関)に登録されている報告主体であることにも触れ、取引所には顧客資産の分別管理、独立監査体制の維持、KYC(Know Your Customer:本人確認)およびAML(Anti−Money Laundering:マネー・ローンダリング防止対策)措置の徹底といった企業統治基準が求められると強調した。

今回の判決は、インド国内における仮想通貨の法的位置づけに明確性を与えるだけでなく、取引所運営と投資家保護の枠組みを再評価する契機となる可能性がある。

 

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2022年1月から仮想通貨を触り始め、みるみるうちにNFTにのめり込んでいった。 現在はWeb3とECの二刀流で生計を立てている 得意なのは喋る事、好きな食べ物はカレー、好きなゲームは格闘ゲーム