欧州ユーザーに向けた新サービスと今後の展開
サンタンデール銀行の完全デジタル子会社であるオープンバンク(Santander Openbank)が、ドイツの顧客向けに仮想通貨取引サービスを開始した。
同銀行の銀行アプリと投資プラットフォームから、ビットコイン(Bitcoin/BTC)、イーサリアム(Ethereum/ETH)、ライトコイン(Litecoin/LTC)、ポリゴン(Polygon/POL)、カルダノ(Cardano/ADA)の売買と保有が可能になり、取引手数料は1.49%、最低手数料は1ユーロ(約170円)、保管手数料は無料である。
この取り組みはEU(欧州連合)のMiCA(仮想通貨市場規制)に準拠しており、透明性や消費者保護を強化した枠組みの下で展開される。数週間以内にスペイン市場でも提供を開始する計画があり、追加トークンや仮想通貨間の変換機能も導入される予定だ。サンタンデールの仮想通貨部門責任者コティ・デ・モンテベルデ(Coty de Monteverde)氏は次のようにコメントしている。
主要な仮想通貨を投資プラットフォームに組み込むことで、顧客の要望に応えている。
ドイツ市場での開始と規制対応
今回のローンチはまずドイツから始まった。顧客は外部取引所を利用せず、オープンバンクの口座内で主要銘柄を直接取引・保有できる。既存の投資商品との統合により利便性が高まり、保管手数料も不要とされている。MiCAは透明性や市場行動に関する要件を設けており、同銀行はその基準に沿った提供体制を整えた。
ドイツ国内では大手銀行も動きを加速している。DZ銀行(DZ BANK)はシュトゥットガルト証券取引所のデジタル基盤を活用して協同組合銀行向けに仮想通貨の試験運用を開始。ドイツ銀行はビットパンダ(Bitpanda)やタウラス(Taurus)と提携し、2026年にデジタル資産保管サービスを提供する計画を発表した。さらにSparkassen-Finanzgruppe(Sparkassen-Finanzgruppe=ドイツの金融グループ)も数千万人規模の顧客に小売取引を提供する構想を公表している。
オープンバンクの参入はこうした流れの一環であり、ドイツ市場全体で小売向け仮想通貨サービスが主流化に向かっていることを示す。
欧州に広がる競争とサンタンデールの強み
欧州では大手金融機関が次々と仮想通貨分野へ参入している。スペインのBBVA(バンコ・ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行)はスイスやトルコの顧客にサービスを展開し、本国でも規制承認を待っている。
フランスのソシエテ・ジェネラル(Societe Generale)はユーロ連動型ステーブルコインを発行。ドイツ銀行の資産運用会社DWSはユーロ建てステーブルコインの開発に取り組んでいる。こうした状況下で、オープンバンクのサービスは、銀行チャネル由来のアクセスを広げるものとして注目される。
サンタンデールはブロックチェーン領域に早くから関わってきた。2018年にはリップル(Ripple)を活用した即時送金アプリを導入し、国際的な決済分野で実績を積んできた。近年は独自ステーブルコインの発行検討も進めており、リテール向け仮想通貨取引と並行して新たな展開を模索している。今回のオープンバンクでのサービス開始は、銀行が従来の金融システムに仮想通貨を組み込み、欧州の消費者にデジタル資産をより身近な存在として提供する動きの象徴と言える。