ETF申請の概要と背景
資産運用会社カナリー・キャピタル(Canary Capital)は、SEC(米証券取引委員会)にトランプコインETF(上場投資信託)のS-1を提出した。
対象はソラナ(Solana/SOL)基盤のミームコイン「Official Trump(オフィシャル・トランプ)」であり、承認されれば投資家は従来の証券口座を通じて同コインへのエクスポージャーを得られる。今回の申請は、同社が米国に特化した「アメリカ製仮想通貨ETF」を申請した翌日の動きである。
申請内容と特徴
トランプコインETFはデラウェア州で登録され、受託者はグローバルコーポレートサービスプロバイダーCSC(Corporation Service Company)のデラウェア州の子会社デラウェア・トラスト・カンパニー(CSC Delaware Trust Company)である。
カストディアンはサウスダコタ州認可の信託会社が担う予定だ。上場実現には取引所による19b-4申請が必要で、規則変更の可否をSECが審査する手続きに入る。市場では申請直後にトランプコインが反応し、TradingViewのデータで8.34ドル、24時間で約2%上昇した。
法的な位置づけ
ブルームバーグのアナリスト、ジェームズ・セイファート(James Seyffart)氏はXでの投稿で、この申請を「33年法に基づく初の純粋なスポット申請」と指摘した。
過去にはRex-Osprey(レックス・オスプレイ)(※1)やTuttle Capital(タトルキャピタル)がTrump coin ETF(トランプコインETF)の申請をしていたが、それはいずれも40年法に基づくものだった。
今後の見通しと市場への影響
SECはすでにスポット型のビットコインETFとイーサリアムETFを承認しており、仮想通貨ETFの制度整備は進んでいる。
NovaDius Wealth Managementのネイト・ジェラシ(Nate Geraci)氏は、スポット型の規制枠組みが完成に近づいているとし、今後の承認加速に言及する。カナリー・キャピタル自身もPENGUを含むミームコイン関連や、SOL、XRP、SUI、TRXに連動するETFを申請中であり、審査ラインアップは拡大している。
関連申請と米国特化の流れ
同社が並行して申請した「アメリカ製仮想通貨ETF」は、米国で発行、米国内で鋳造が進み、または運用の大部分が米国内で行われるプロジェクトを対象とするインデックスを追跡する。
受託者はCSCデラウェア・トラストで、カストディはサウスダコタ州認可の信託会社が担う計画である。ティッカーはMRCA、上場市場はCboe BZXを予定し、ネットワーク検証によるステーキング報酬獲得の可能性にも言及がある。米国内の規制明確化や政策的な追い風は、米国拠点のプロジェクトに優位に働くとの主張が添えられている。
今回のトランプコインETF申請は、ミームコイン領域への上場投資信託の裾野を広げる試みである。注目点は、19b-4の進捗(しんちょく)、カストディ体制の最終確定、先物関連の前提条件の扱いである。審査の行方次第では、仮想通貨ETF市場とミームコイン市場の双方に新たな資金流入を促す可能性がある。