ING銀行がユーロ建てステーブルコイン導入に向けた取り組みを開始

ING銀行のロゴとユーロを象徴するビジュアル要素が融合した、ユーロ建てステーブルコイン構想を示す高精細グラフィック

欧州の大手銀行ING銀行がステーブルコイン領域に進出か

オランダの大手銀行INGが、ユーロ建てステーブルコインの発行を計画している。

プロジェクトは他の欧州系銀行との協業も視野に入れており、域内のブロックチェーン金融インフラの整備と強化を目的としている。発行時期や名称はまだ明らかにされていないが、関係者によれば現在は複数の銀行が参加を検討しており、取締役会の承認を待つなどといった段階にあるという。正式なローンチには、EU規制への準拠が不可欠とされている。
INGは他の銀行や仮想通貨サービスプロバイダーと共同でプロジェクトに取り組んでいるとされ、単独ではなく広範な金融ネットワークを活用したステーブルコインエコシステムの構築が視野にある。

こうした動きは、公的なデジタルユーロとは異なり、民間銀行による補完的なデジタル通貨の登場として注目されている。

INGの戦略とユーロ圏への影響

INGはこれまでにもDeFi(分散型金融)やブロックチェーン技術に積極的に取り組んできた。今回の構想もその延長にある。

ECB(欧州中央銀行)が進めるデジタルユーロとは別に、INGのような民間銀行によるステーブルコインは、決済の効率化や透明性の向上、国際取引のコスト削減など、実務面での課題解決を目的としたものと考えられる。

デジタルユーロはECBが発行するCBDC(中央銀行発行デジタル通貨)であるのに対し、ステーブルコインは民間企業が価格の安定を目的に発行するユーロ連動型通貨であり、性質や役割が異なる。

MiCA規制がもたらす新たな競争環境

プロジェクトの実現には、EU(欧州連合)のMiCA(仮想通貨市場規制)法との整合が不可欠だ。

MiCAは2024年に施行され、仮想通貨やステーブルコインの発行と管理に関する厳格なルールを定めている。ライセンスの取得、準備金の保有、透明性の確保などが義務付けられており、信頼性の高い市場形成が期待されている。注目すべきは、この規制によってテザー(Tether/USDT)のような大手ステーブルコイン発行企業がEU市場から排除されつつあることだ。MiCAに適合する銀行や金融機関にとっては、こうした状況が市場参入の追い風となっている。INGがこの動きに乗じてプロジェクトを始動した背景には、制度的な後押しがあるとみられる。

INGのステーブルコインがどのようなユースケースに対応するかは明らかにされていないが、銀行間決済やトークン化資産の交換といった分野での活用が期待される可能性がある。今後、INGがプロジェクトの詳細を公表すれば、ユーロ圏のデジタル通貨市場における民間主導の動向に拍車がかかるとみられる。

現在、ECBのデジタルユーロは正式な承認に至っておらず、政治的調整や加盟国の反発もある中で、民間銀行による柔軟なソリューションへの期待が高まっている。商業銀行によるステーブルコインの発行は、EUの金融政策に新たな視点をもたらす可能性がある。

ABOUTこの記事をかいた人

2022年1月から仮想通貨を触り始め、みるみるうちにNFTにのめり込んでいった。 現在はWeb3とECの二刀流で生計を立てている 得意なのは喋る事、好きな食べ物はカレー、好きなゲームは格闘ゲーム