Binance.USが2年ぶりに米ドル入金を再開
米国の仮想通貨取引所Binance.USは、規制当局との対立やSEC(米証券取引委員会)の訴訟が続く中、2年ぶりに米ドルの入金を再開した。
2023年6月の法定通貨取引の停止以降、同取引所は仮想通貨のみを扱う形へと移行していたが、今回の決定により、ACH(銀行振込)を利用した米ドルの入出金が可能となった。この動きは、取引所の流動性を高め、ユーザー基盤の回復を目指す戦略的な一手とみられている。The Blockのデータによると、米ドル取引量の市場シェアは2024年1月までに10%から0.1%に急落。法定通貨のオンランプが制限されたことで、多くのユーザーが取引所を離れる結果となっていた。
Binance.USの暫定CEOノーマン・リード(Norman Reed)氏は、「長らく待ち望んでいた米ドルサービスの完全回復への大きな節目だ」とコメントしており、取引の正常化が市場にポジティブな影響を与えることが期待されている。
SEC訴訟と米ドル取引停止の背景
Binance.USは2022年、米国の銀行との提携悪化により法定通貨の入出金停止後、SECが未登録証券の提供を理由に、Binance、Binance.US、共同創業者のジャオ・チャンポン(趙 長鵬:Zhao Changpeng)を提訴している。
SECは、Binance.USが適切な規制手続きを踏まずに米国市場でサービスを展開し、投資家を誤解させたと主張している。
この訴訟の影響で、Binance.USは仮想通貨のみの取引所へと移行せざるを得なかった。取引量の低下は著しく、市場シェアは2024年1月時点でほぼゼロに近い状況となっていた。今回の米ドル入金再開は、規制対応の進展と市場復帰の第一歩とみられている。
規制リスクを抱えながらの競争力回復
業界アナリストは、米ドル取引の復活は、さらなる規制協議を促し、コンプライアンス体制の明確化につながる可能性があると指摘している。
SECとの法的対立が完全に解決したわけではなく、Binance.USの今後の事業継続には慎重な対応が求められる。Binance.USは「規制上の課題を乗り越え、完全な法定通貨サービスの再導入を進める」としており、今後の市場動向に大きく影響を与える可能性が高い。一方、SECの姿勢が変わらない限り、事業の安定には時間がかかるだろう。
今回の動きが他の取引所にも波及し、米国市場全体の規制の方向性がどのように変化するのかが、今後の焦点となる。