バイビットは規制強化でインドでのサービス停止の決断
仮想通貨取引所バイビット(Bybit)は、インドでのサービスを一時停止すると発表した。
この決定は、同国の厳格化する規制環境への対応を目的としている。インドでは近年、仮想通貨に関する規制が強化されており、取引所や投資家にとって大きな課題となっている。法律の不透明性や高額な課税が状況をさらに複雑する中、バイビットは一時的にインドでの運営を停止する決断を下した。1月12日午後5時(日本時間)をもって、同取引所はインドのユーザー向けの大半のサービスを停止しており、この措置は、インドの「マネーロンダリング防止法(PMLA)」に基づく規制要件を遵守するためのものとされる。
同社は、資金の引き出しが引き続き可能であり、既存ポジションはクローズオンリーモードで管理されていると発表。また、サービス再開に向けた具体的な手続きが進行中だ。なお、バイビットは、この停止措置がインド市場からの長期的な撤退を意味するものではないと強調している。
バイビットによる公式声明
同社は規制の進展を注視しながら、インドのユーザーに対して資産管理のサポートを提供していくとしている。インドは仮想通貨の導入率で世界第1位とされているが、厳しい規制が業界の発展を妨げている。
多くの仮想通貨関連企業が、UAEアラブ首長国連邦やシンガポールなど、規制が比較的緩和された地域へ移転している。さらに、インド政府が新興産業に対して積極的な姿勢を見せていないことは、2024~25年度連邦予算で仮想通貨に関する言及が一切なかったことからも明らかだ。現在、仮想通貨の利益には30%の固定税率が課され、1%の源泉徴収税(TDS)も適用されている。
規制環境の課題と展望
インドの仮想通貨規制の枠組みは未熟であり、事業者や投資家にとって大きな障害となっている。
一方で、RBI(インド準備銀行)はデジタルルピー(CBDC)の実験を進めており、仮想通貨とは異なるデジタル資産を推進している。
フランスでの対応事例
バイビットが規制圧力により業務を停止したのは今回が初めてではなく、2024年12月には、フランスでのコンプライアンス要件の強化を受けて同国から撤退することを発表しており、このような事例は、グローバルな仮想通貨業界における規制の影響を浮き彫りにしている。
インドユーザーへの影響
今回のサービス停止は、多くのインドユーザーに影響を与えると見られる。
バイビットは、資産の安全性を確保し、出金手続きがスムーズに進むようサポートを提供するとしている。また、影響を最小限に抑えるため、ユーザーとの継続的なコミュニケーションを行う予定だ。
規制と成長の狭間でバイビットの決定は、インド市場における仮想通貨取引所の運営の難しさを象徴している。他の取引所も、インドの規制環境が明確になるまで類似の措置を取る可能性がある。一方で、規制が整備されれば、インド市場は引き続き成長の機会を提供する重要な市場となるだろう。このような中、バイビットの一時撤退は、規制環境への適応とリスク管理を重視した戦略的判断である。
今後、インドの仮想通貨規制の進展が、この決定の長期的な影響を左右することになるだろう。業界全体がこの動向を注視しており、規制と成長のバランスを取る重要性が改めて浮き彫りになった。