トルコリラが仮想通貨市場シェアでユーロを上回る
トルコリラ(TRY)は、仮想通貨取引に使用される法定通貨の中で過去最高を記録し、ユーロを上回り、3番目に大きい通貨となった事がわかった。
Kaiko「Stablecoin Weekly Trade Volume」より画像引用
Kaiko Research(カイコリサーチ)の最新調査報告書によると、TRYの市場シェアは拡大し、ユーロ(EUR)を上回り、市場シェアの19%。これは、6月初旬に記録された同通貨の過去最高値である。トルコは2022年以降、インフレに悩まされており、市場シェア拡大はこれに起因しており、ピーク時には70%を超え、リラの価値を大幅に低下させた。TRYが法定通貨の中で最もパフォーマンスの悪い通貨の1つとなったことで、Kaikoの研究者は、トルコ国民がヘッジ手段として仮想通貨に目を向けていると考えている。この傾向は、同様の経済状況にある管轄区域で目撃されている減少だ。
同報告書では、この変化は、仮想通貨採用のもう1つの原動力である外国為替のボラティリティによるものだとも述べている。
外国為替市場では大変動
過去数カ月、外国為替市場では大きな変動があり、Kaikoによると、これは金融政策の相違と2024年の選挙の記録的な数によって促進されている。
日本円(JPY)は米ドル(USD)に対して30年ぶりの安値に下落しており、メキシコペソ(MXN)は2023年10月以来の最低水準に下落する一方で、英ポンド(GBP)はユーロ(EUR)に対して2年ぶりの高値に上昇。これらすべての通貨の購買力は弱まっている。また、Kaikoはバイナンス(Binance)の最近の規制上のハードルがTRYの市場シェア拡大の一因であると考えている。なお、バイナンスは、規制強化により過去数年間で複数の銀行パートナーを失っている。
2023年、バイナンスのパートナーでGBP預金を扱っていた多国籍オンライン決済企業のPaysafe(ペイセーフ)は、英国における規制不確実性のため、プラットフォームとの関係を断っている。その後すぐに、このプラットフォームは、バイナンスへのオーストラリアドル(AUD)の入金を扱っていたオーストラリアの銀行Westpac(ウェストパック)との提携を断ち切っている。その結果、このプラットフォームはGBPとAUDの取引ペアを上場廃止している。
TRY普及が進んでいるのは国が仮想通貨規制に注目している事も要因に
Kaikoは、これらの結果、市場シェアの多くがTRYに移行し、その取引量を押し上げたと示唆。仮想通貨分野でのTRYの普及が進んでいるのは、国が仮想通貨規制に注目しているからと考えられている。
トルコのアブドラ・ギュレル(Abdullah Güler)与党議長は、仮想通貨サービスプロバイダー向けのさまざまなフレームワークを導入する法案を提出。この法案では、CMB(Capital Markets Board:資本市場委員会)も仮想通貨部門の監視を強化。この法案では、暗号資産に関する国際基準への国の準拠を強化するため、仮想通貨企業に対するライセンス措置も導入される予定だ。この動きは、2021年以来トルコを「グレーリスト」に載せてきたFATF(Financial Action Task Force:金融活動作業部会)からの批判を払拭(ふっしょく)するものと期待される。
なお、トルコのメフメット・シムシェク(Mehmet Şimşek)財務大臣も課税枠組みが進行中であることを最近明らかにしており、これによってトルコは仮想通貨への投資による利益に課税することになる。