ドイツ銀行の株は急落し、銀行のパニックの中で債務不履行保険は急騰

ドイツ銀行株価が

ドイツ最大の金融機関であるドイツ銀行(Deutsche Bank AG)の株価は、今月相次いだ世界的な銀行破綻を受けて金融業界の不安が広がり続けているため、暴落し始めていることが明らかになった。

ドイツ銀行の株価は23日に9.06ユーロから8.25ユーロ(約1,280円から1,165円)に下落。1日で11%、1カ月前と比べると26%下落しており、この銀行の下落は、コメルツ銀行(-5.6%)やソシエテ・ジェネラル(-6.48%)など、近隣の欧州銀行株の下落に連動している。ドイツ銀行の5年物クレジット・デフォルト・スワップ価格が220bps(ベーシスポイント)を超えて急騰し始めた後、下落は加速。わずか2日前の142bpsから上昇し、S&P500(S&P500種指数)によると、2018年後半以来の最高値となった。

実際、ドイツ銀行の最近の開示資料によると、同銀行の流動性カバレッジ比率は2022年12月末時点で135%となっており、統計で100%の最低要件をはるかに超えていることを確認しており、銀行は必要に応じて現金流出をカバーできる十分な流動資産を保持している。また、CDSコスト(※1)の高騰は、同社決算が10四半期連続の黒字であるにもかかわらず、銀行の安定性に対する投資家の恐怖心を示しており、同銀行は2022年に税引き後利益で57億ユーロ(約5,000億円)を獲得している。

というのも、今月初めにSVB(Silicon Valley Bank:シリコンバレー銀行)が破綻し、FRB(Federal Reserve Board:連邦準備制度理事会)がシステミックリスク(※2)例外措置の一環として同銀行の預金者を救済したことを受けて、懸念が広がっている。

(※1)CDS(Credit default swap:クレジット・デフォルト・スワップ)とは…
企業や国などの破綻リスクを売買するデリバティブ(金融派生商品)で、投資対象の破綻に備えた保険の一種の事。

(※2)システミックリスク(Systemic Risk)とは…
特定金融機関や市場が機能不全となったなら場合、その影響が他の金融機関や市場、さらには金融システム全体にまで波及する金融危機を起こすリスクの事。


米国の銀行パニックはすぐに欧州へ

パニックはすぐに大西洋を渡り、今週初めに32億5,000万ドル(約4,249億円)の合併救済措置でUBS銀行に買収されたクレディ・スイス(Credit Suisse)を襲い、クレディ・スイスが救済される直前、同社のCDSスワップ(※3)はS&P500によると1,194bpsまで急上昇し、ドイツ証券の現在の水準よりもはるかに高くなっている。

(※3)CDSスワップ(クレジット・デフォルト・スワップ)とは…
デリバティブやクレジットデリバティブの一種。特定企業等が倒産したときなど、一方の当事者から他方の当事者に、あらかじめ定められた範囲の金額が支払われる企業の信用リスクを取引するための商品の事。

これに対し、SVBは2,000億ドル(約26兆円)強の資産を保有しており、FRBは同行をシステム上重要な銀行とみなし、預金者を救済することにした。しかし、欧州の規制当局は、FRBによる救済措置が銀行の世界的な信用を損なう危険性があると考え、すでに非難を集めている。一方で、ジャネット・イエレン(Janet Yellen)財務長官は、必要であれば、米国の銀行預金を確保するために追加行動を取ることもいとわないと述べている。