トランプ大統領が推薦する元FRB候補者、ステーブルコインの発行を計画
2019年10月21日、米国エコノミストのスティーブン・ムーア氏が参加しているDecentralにて、ステーブルコイン「Frax(FRX)」の発行決定を発表した。Fraxの創設者は、EOSブロックチェーンを使用した営利目的のWiki「Everipedia」の共同創設者でもあるSam Kazemian氏。Fraxは年末までにMVP製品の販売に取り組み、目標としてはETHとEOSでメインネットリリースすることだという。
Fraxの仕組み
このステーブルコインは米ドルを担保とするテザーなどの他銘柄と異なり、仮想通貨とデジタル債権のアルゴリズムで管理された「Fractional reserves(部分準備制度)」を採用するという。米ドルと1:1の比率にはならず、不足する分を代わりに準備金を貸し出すことで埋め合わせる。
ローンの内容はブロックチェーンに記録されるため、中央銀行は不要となるという。米ドルで経済を安定させるのではなく、仮想通貨でそれを行おうとする考えだ。氏によれば、リブラと似ているとのこと。仮想通貨市場の安定化にもつながるとされる。
この点についてムーア氏は「30年間金融政策を続けて生きたが、通貨に対する政府の独占に常に悩まされていた。これは市場にとって不健康だ。しかし民間の競合他社がマネーサプライ(世間に出回る通貨の総量)をめぐって中央銀行に挑戦するのはとても健全だ」と述べている。中央銀行は金融政策の一環としてハイパワードマネーをコントロールしてマネーサプライを変化させるので、氏はその点を指摘していると思われる。
ムーア氏とは
2016年の大統領選でトランプ大統領のシニア・アドバイザーを務め、2017年12月に可決した大型減税法案の立案者の一人でもある。トランプ大統領は今年3月、米国の中央銀行に当たるFRBの7人の理事の一人にムーア氏を指名する意向を示した。FRBは2018年に利上げに踏み切ったが、利下げしたいトランプ大統領は自分の側近を送り込んで金融政策介入を目論む考えだった。しかしムーア氏の女性軽視問題と税金未納問題が論争を呼び、氏は5月に理事候補を辞退。
ムーア氏は6月、リブラを「バランスが取れた良いこと」と支持する姿勢を見せ、同時にDecentralが発行するステーブルコインFraxを仮想通貨のFRBにする意向を示した。氏は7月にDecentralの最高責任者としてチームに参加。