機関投資家需要に応えるCMEの新方針
米国の大手デリバティブ取引所CMEグループは、仮想通貨先物とオプションの24時間365日取引を導入する計画を発表した。
開始は規制当局の審査を経たうえで2026年初頭を予定しており、CMEグループのティム・マコート（Tim McCourt）氏は「顧客は毎日リスク管理を迫られており、常時稼働する規制市場は安心感を提供できる」と述べている。
背景と導入の狙い
CMEはこれまでビットコイン（Bitcoin/BTC）やイーサリアム（Ethereum/ETH）を中心に、ソラナやXRPなどの先物商品も拡大し、規制下で多様な仮想通貨取引を提供してきた。
今回の24時間取引はその延長線上にあり、海外の常時稼働型取引所と直接競合する姿勢を明確に示している。新しい取引モデルでは週末に2時間程度の短いメンテナンス時間を設け、それ以外の時間は常時稼働とする。取引自体は途切れなく可能となる一方、清算や決済は依然として標準営業日に結び付けられる。休日や週末に成立した取引は翌営業日に処理される仕組みだ。
さらに、市場動向も導入の背景を後押ししている。2025年第3四半期には仮想通貨関連の1日平均取引高が34万件に達し、名目元本で約141億ドル（約2兆円）を記録。9月には想定元本建玉が過去最高の390億ドル（約5.7兆円）に達した。取引量の急増に加え、1010人以上の大口トレーダーが建玉を保有するなど、機関投資家の参加が過去最高水準に達している。
常時稼働化の利点と残る課題
24時間365日体制が実現すれば、機関投資家は夜間や週末でも規制市場でリスクヘッジを行うことが可能となる。
従来は海外取引所に依存せざるを得なかった時間帯にも対応できるため、流動性と利便性の向上が期待される。こうした動きは、米国市場におけるCMEの存在感を一層強化する可能性がある。
ただし課題も残る。常時稼働化に合わせた清算や証拠金の管理、決済システムとの調整が不可欠となり、インフラの安定運用が重要となる。CMEは金利や株価指数、外国為替、エネルギー、農産物など幅広い資産クラスを扱う世界的取引所であり、その経験を活かして段階的に対応していく見込みだ。規制審査の進展とともに、この新体制がどこまで市場に浸透するかが注目される。
