ペイパルのステーブルコインが複数のブロックチェーンに拡張
ペイパル(PayPal)のPYUSDが複数のブロックチェーンでローンチし、クロスチェーン・ステーブルコインの相互運用性を強化している。
ペイパルの米ドルペッグ・ステーブルコインは、LayerZeroの相互運用性フレームワークとの新たな統合を通じて、ネイティブネットワークの枠を超え、その範囲を拡大。今回の展開により、パーミッションレス版のトークンであるPYUSD0が、トロン(Tron)、アバランチ(Avalanche)、セイ(Sei)、アプトス(Aptos)、を含む複数のブロックチェーンに導入される。なお、ベラチェーン(Berachain)とフロー(Flow)については、既存の許可なしバージョンはPYUSD0にアップグレードするとのことだ。
クロスチェーン・ステーブルコイン送金の需要が高まる中、今回の拡大は、ユーザーがペイパル独自のプラットフォームのみに依存することなく、流動性のサイロ化を解消。複数のエコシステム間でのファンジビリティを確保することを目的としており、2023年のデビュー以来、PYUSDの流通において最大の一歩となる。
ペイパルのクロスチェーン・ステーブルコインの仕組み
パクソス・トラストカンパニー(Paxos Trust Company)が発行するPYUSDは、当初はイーサリアム(Ethereum)、ソラナ(Solana)、アービトラム(Arbitrum)、ステラ(Stellar)に限定されていた。
今回新たにローンチされたPYUSD0は、これらに加えて上記に記載したブロックチェーンでも利用可能になる。すべてのバージョンは引き続き米ドルと1:1で交換可能なため、ユーザーは特別な手続きをする必要はない。
この拡張は、80以上のブロックチェーンを連携させるブリッジサービスであるスターゲート(Stargate)を通じて実現。2025年8月に同社を買収したLayerZeroは、Hydraモデルを用いてPYUSDをこれらの9つの追加ネットワークに拡張した。発表に際してペイパルUSDのエコシステム責任者であるデビッド・ウェバー(David Weber)氏は次のように述べている。
LayerZeroと連携することで、最初からコンプライアンスを維持しながら、新しい市場に安定した価値をシームレスに提供できます。
ステーブルコイン競争の激化
アナリストは、ペイパルの取り組みにより、テザー(Tether/USDT)とサークル(Circle)のUSDコイン(USDCoin/USDC)が支配する2,700億ドル(約40兆円)規模のステーブルコインセクターにおける競争が激化する可能性があると指摘している。
ペイパルのステーブルコインは最近、時価総額約13億ドル(約1,926.7億円)に達し、過去最高を記録したものの、これはテザーの1,710億ドル(約25.3兆円)やサークルの740億ドル(約11兆円)と比べると見劣りしてしまう額だ。
今後、ペイパルの普及拡大は、同社の新しい仮想通貨サービスの導入を加速させる可能性がある。同社は最近、ビットコイン、イーサリアム、PYUSDの取引をサポートする予定のP2P(ピアツーピア)ツール「PayPal Links」を発表。クロスチェーン機能が確立されれば、ペイパルはフィンテックのリーダーとしてだけでなく、トークン化経済における重要なインフラプロバイダーとして再出発する可能性があると期待されている。