SECソーシャルメディアアカウントがハッキングされ、ビットコインETFが承認されたと偽る

SECアカウントのハッキングで仮想通貨価格が一時急騰

SEC(米国証券取引委員会)のXアカウントがハッキングされ、同委員会がこの商品の計画を承認したとする偽の投稿が、世界最大の仮想通貨の価格を一時的に急騰させたことが明らかになった。

SECのゲーリー・ゲンスラー(Gary Gensler)委員長は投稿で、決定は下していないと明らかにしたことで、SECのXアカウントがハッキングされていたことが判明。また、ウォール街の主要規制当局のソーシャルメディア・アカウントが侵害された経緯について、米当局による捜査の火種となり、大きなサイバーセキュリティ事件へと急変した。

SECによると、@SECGov Xのアカウントで2024年1月9日(火曜日)午後4時(※日本時間1月10日6:00)過ぎの短時間に未知の人物による未承認のアクティビティがあったという。偽の投稿が削除された後、Xの事業運営責任者であるジョー・ベナロク(Joe Benaroch)氏は声明の中で「アカウントは安全であり、根本的な原因を調査している」と主張。また、9日深夜の声明で、規制当局は法執行機関と協力して事件を調査し、不正アクセスは停止され、投稿はSECやそのスタッフによるものではないと述べ、ゲンスラーCEOは別の声明で、ETFに関する決定は下していないことを明らかにした。

これについて法律事務所Haynes Boone(ヘインズ・ブーン)のパートナーで元SEC地域ディレクターのカート・ゴットシャル(Kurt Gottschall)氏は、次のように述べている。

サイバー攻撃の広さと頻度を如実に示している。皮肉なことに、SECはサイバーセキュリティ・インシデントを経験した上場企業や資産運用会社に対して、あまり同情的な態度を示してこなかった。


<ゲンスラー委員長を敵視する者へエサを与えたか

今回の情報漏洩は、ゲンスラー委員長を、業界を抑制しようとする熱意から敵視してきた仮想通貨信奉者たちに餌を与えたと見られている。

実際、仮想通貨のオンライン上の脆弱性を繰り返し警告してきた規制当局にサイバーセキュリティ事件が降りかかるという皮肉は、SECがビットコインETF(上場投資信託)を承認するのを何年も待ち続けてきた批評家たちには理解できなかっただろう。

米国では、ビットコインを裏付けとするETFの上場を12社ほどが申請しており、SECは1月10日(米国時間)までに、そのうちの少なくとも1つの申請に対してアクションを起こすことになっており、仮想通貨関係者は、規制当局がその日を利用して一度に多数の決定を発表するだろうと推測している。

スポット担保のビットコインETFが取引を開始するには、2つの技術的要件を満たす必要があり、第一に、SECはETFを上場する取引所によるいわゆる19b-4ファイリングにサインオフしなければならず、第二に、SECは関連するS-1フォームを承認しなければならない。このS-1フォームとは、ブラックロックやフィデリティを含む、発行予定者による登録申請書のことであり、SECは今週、取引所の提出書類である19b-4について採決を行う予定であり、同時期に発行者の申請書であるS-1に対してアクションを起こすと予想されている。

一方で、ソーシャルメディア上では、承認に関する誇大広告が蔓延しており、仮想通貨ニュースサイトが10月16日、ブラックロックがスポットETFの上場を承認されたとXに誤って投稿したことで、ビットコインは10%も急騰した。この急騰で約8,500万ドル(1億2,700万ドル)の主に弱気の取引ポジションが清算されたが、すぐに反転している。