米国上院議員らが仮想通貨テロ資金対策法案を提案
テロ活動の資金調達における仮想通貨の使用を抑制するための重要な動きとして、超党派の米国上院議員グループは、そのような活動に使用されるデジタル資産を対象とする新たな法案を提出したことが明らかになった。
2023年12月7日(木曜日)、ミット・ロムニー(Mitt Romney)上院議員、マーク・ワーナー(Mark Warner)上院議員、マイク・ラウンズ(Mike Rounds)上院議員、ジャック・リード(Jack Reed)上院議員により、テロ資金供与防止法が提案された。今回の動きは、10月7日のハマスによるイスラエル攻撃を受けたもので、デジタル資産取引における新たな脅威に対処する緊急の必要性を強調している。また、この法案は、仮想通貨と伝統的な不換紙幣の両方を使用し、テロ組織に資金を提供することに関与しているエンティティを包含するように米国の制裁を拡張することを目指している。
この立法努力は、テロ行為を助長する仮想通貨の悪用の可能性に関して、米国の議員たちの間で高まっている懸念を強調するものであり、ロムニー上院議員は、こうした進化する脅威に対処するため、米財務省に効果的な権限を与えることの重要性を強調した。
デジタル時代のテロと闘うために必要なツール装備を求める法案
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、ハマスが2021年8月から2023年6月の間に4,100万ドル(約59.6億円)を受け取ったと報じており、テロに関連した仮想通貨取引に対する制裁強化を求める声に火をつけた。
10ページからなる今回の法案には、米国財務省が制裁対象として特定された外国のデジタル資産取引促進機関との取引を禁止できるようにする措置が含まれている。この措置は、悪意ある目的でのデジタル通貨の悪用を抑制するための積極的なアプローチを反映しており、デジタル時代のテロと闘うために必要なツールを財務省に装備することを求めている。
実際、OFAC(米国財務省外国資産管理局)は、10月18日にガザを拠点とする仮想通貨事業者に制裁しており、資金洗浄に仮想通貨ミキサーを使用しているとして、北朝鮮の国民を対象としている。さらにこの法案の導入は、エリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)上院議員を含むさまざまな米国議員が、仮想通貨がテロ資金調達に果たす潜在的な役割について表明した懸念と一致。10月のハマス攻撃後、ウォーレン上院議員をはじめ100人以上の議員が、テロ資金につながる不正な仮想通貨活動を抑制するための断固とした行動を求めている。
仮想通貨利用の議論にも一石を投じる
今回の法案は、テロ資金調達に取り組む協調的な努力を反映する一方で、仮想通貨を利用することに関するバランスの取れた議論にも一石を投じている。
一方で、ブロックチェーン分析を手掛けるElliptic(エリプティック)は10月、ハマスの攻撃資金として仮想通貨が大量に寄付されていることを示す実質的な証拠はないと報告。同じく、ブロックチェーン分析を手掛けるChainalysis(チェイナリシス)についても、こうした懸念を認めつつも、テロ集団が仮想通貨をどの程度利用しているかについての誇張された主張に注意を促している。なお、同社はブロックチェーン技術の公共性と透明性により、従来の不換紙幣を利用した方法よりもテロ活動の資金調達には効果が低いと主張している。