ステーブルコイン発行者テザー(Tether/USDT)がAIに参入

テザーがノーザンデータグループの非公開株式を取得AIに参入

ステーブルコインを発行会社のテザー(Tether)は、ドイツを拠点とする仮想通貨マイニング会社ノーザンデータグループ(Northern Data Group)の非公開株式を取得したことが明らかになった。

時価総額で最大のステーブルコイン発行会社であるテザーは、4億2,000万ドル(約621億円)を1万台のGPU (Nvidia H100グラフィックプロセッシングユニット)に投資したという。この戦略的投資は、AI(人工知能)における協業の可能性を示唆しており、テザーはグループ会社のダムーン (Damoon)を通じてこの投資をしたが、テザーはこの提携に割り当てられた資本金額を明らかにしていない。

フォーブスによる憶測的報道では、4億2,000万ドルの取引が報告されているものの、テザーは正確な数字を確認も反論もしていない。7月に行われたテザー社とノーザン・データ社との事前の話し合いで、ステーブルコイン大手が買収を最終決定する前に、グループ会社であるダムーンを強化する野心を持っていたことが明らかになった。

AIシステム市場への投資はかなりの利益を生む可能性大

今回の取り決めにより、テザー社はノーザン・データの株式20%を取得することになり、ノーザン・データのアルーシュ・ティライナタン(Aroosh Thillainathan)CEO(最高経営責任者)は、成長するAIシステム市場への投資は、かなりの利益を生む可能性があると述べた。

これにより、Damonは最新のGPUハードウェアを調達することを目指しており、テザーのパオロ・アルドイーノ(Paolo Ardoino)CTO(最高技術責任者)は、このベンチャーを振り返り、新しい技術産業への飛び込みだと表現したうえで、次のように述べている。

ノーザンデータグループへの投資は、新たな技術的フロンティアへの新たな冒険を意味するものであり、私たちはこの投資に興奮しています。

さらに同社は、この投資が準備金に浸ることはなく、顧客の資金が影響を受けないことを保証すると述べたが、テザーの過去は物議を醸しており、特に米国では準備金の透明性をめぐって法的な問題に直面し、多額の罰金と監視の強化につながっている。実際、同社はノーザンデータ社への出資以外にも、アルゼンチンのKriptonMarket社との協業や、グルジアでのP2P(ピアツーピア)インフラ強化のためのMOU (※1)締結など、同社のグローバルな影響力はパートナーシップでも明らかになっている。

(※1)MOU(Memorandum of Understanding:覚書)とは…
契約や条約、協定などが正式に締結される前段階の合意文書のこと。

最近では、Hive、Hut8、Iris Energyなどのマイナーは、そのようなベンチャーを行っていると伝えられており、Iris Energyは8月下旬、事業拡大のために1,000万ドル(約14.8億円)を投資し、248台のNvidia H100を購入したと発表している。

一方で、AIの盛り上がりを受け、Nvidia GPUの需要は急増しており、同社は今年55万ユニットの出荷を見込んでおり、これらのGPUはEbayで4万ドル(約600万円)を超える価格で取引されているとの報告もある。これらのAI中心GPUの価格は、パッケージや購入数量によって変動する可能性があり、Nvidiaは、H100 SXM、H100 NVL、GH200 Grace Hopperモデルの価格については公表していないとのことだ。