元中央銀行高官:中国のデジタル人民元はほとんど使われていないと明かす

現金とカードに慣れた中国の国民はデジタル人民元を使用していない

中国デジタル人民元の試行は期待外れの結果をもたらしており、新しい形の国家法定通貨は銀行に何の利益ももたらさず、現金の代わりとしてのみ使用される以上に拡大する必要があると、元中央銀行高官が語っている事が分かった。

PBOC(People’s Bank of China=中国人民銀行)の元調査局長である謝平(Xie Ping)氏によると、中国のCBDC(中央銀行デジタル通貨)の使用は「低く、非常に非アクティブ」であったとのこと。同氏は、デジタルファイナンスに特化した会議でこの見解を示し、2年間の試行におけるデジタル人民元の累積流通量は、わずか1,000億元(約2兆円)にすぎないと述べている。ロイターの報道によると同氏は、デジタル人民元の適用を拡大する必要があると考えており、清華大学主催のフォーラムにて次のように語っている。

結果は理想的ではありません。変える必要があるのは、デジタル人民元が現金の代わりとして、消費のみを目的として機能することです。


デジタル人民元使用促進のための策とは

現金、銀行カード、サードパーティの決済プラットフォームによって形成される決済市場構造は、現在、中国での日常的な消費のニーズを満たしており、謝氏によると、庶民は慣れていて、変えるのは難しいとのことだ。

中国はCBDC開発競争の最前線に立っており、「赤い封筒キャンペーン」を通じてデジタル人民元を促進。デジタル人民元「e-CNY」を提供してその使用を促進し、パイロットプロジェクトの地理的範囲を新しい都市に拡大していった。また、当局は人民元のデジタル版のユースケースを増やそうと試みており、最新例として、浙江省寧波(せっこう省にんぽー)と広州の公共交通機関でのデジタル人民元決済の導入が挙げられる。

謝氏によると、デジタル人民元ビジネスは相乗効果がなく、銀行のビジネスに商業的利益もなかったものの、Alipayなどのサードパーティ決済システムは、投資、保険、消費者融資などのより魅力的な機能を提供していたという。そのため同氏は、個人が国家支援のコインで金融商品を購入できるようにすることや、それをより伝統的な支払いプラットフォームに接続して使用する新しい機会を生み出すことによって、デジタル人民元の使用を拡大できるという考えを明らかにしている。