ECB総裁、仮想通貨がロシアの制裁回避のために使用されていると主張

ECB総裁が制裁回避に仮想通貨使用と主張

ヨーロッパの中央銀行であるECB(European Central Bank=欧州中央銀行)のクリスティーヌ・ラガルド(Christine Lagarde)総裁は、ロシアに対する国際的な制裁を逃れる手段として仮想通貨が利用されていると発言したことが明らかになった。

ラガルドECB総裁は、3月22日(金曜日)に開催されたBIS(Bank for International Settlements=国際決済銀行)のイノベーションサミットで、仮想通貨は世界の多くの国々が決定した対ロシア制裁を回避する手段となっているとの見解を示し、次のように語った。

ルーブルの仮想通貨やステーブルコインへの交換量は、現時点では2021年以降で最も高いレベルです。世界の多くの国々がロシアに対して決定した制裁を回避しようとする方法として、仮想通貨が確かに利用されています。


ロシアやプーチン大統領は本当に制裁逃れで仮想通貨利用か

ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領の侵略を抑止するため、ロシアに対して行われた経済制裁をかわす手段として、ロシア人が仮想通貨を利用する可能性を懸念するのは、ラガルド総裁だけではない。

エリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)上院議員は、仮想通貨取引所がロシア連邦に住所を置く人物に関連するアドレスと取引することを禁止する法案を提出しており、この法案により、ロシア人が制裁を逃れるためにデジタル資産を使用した外国企業を特定し、懲罰的措置を取ることを行政府に義務付けるものだという。データ会社のKaikoによると、3月22日時点で、ルーブル建てビットコイン(Bitcoin/BTC)とテザー(Tether/USDT)ステーブルコインの合計取引量は、仮想通貨取引所全体で900万ドル(約11億円)未満であり、ビットコインの世界的取引量のほんの一部に過ぎないことを示している。そのため、万が一ロシアやプーチン大統領が仮想通貨を制裁回避の道具として利用していたとしても、ほんのわずかな金額であり、効果的な制裁回避にはなっていないようだ。

一方で、金融犯罪取締ネットワークの元ディレクター代理であるマイケル・モジエ(Michael Mosier)氏は、ブロックチェーンの性質上、仮想通貨を制裁回避に利用することはできないとの見解を示し、次のように語っている。

仮想通貨は、そのスピードと匿名性から、新たな決済手段として選ばれるようになりました。しかし、仮想通貨による支払いは、コロニアル・パイプラインの攻撃者から230万ドルの仮想通貨を回収した際に見られたように、法執行機関にとって不透明な銀行取引よりも大きな視認性と捜査上の利点を提供しています。

さらに、ブロックチェーン分析会社Chainalysisの共同設立者であるジョナサン・レビン(Jonathan Levin)氏は、ロシアやプーチンが制裁を逃れるために仮想通貨を組織的に使用している証拠を確認していないと述べている。