オーストラリア、CFD規制の10年延長を提案—暗号資産取引へのレバレッジ上限追加も

個人投資家の巨額損失を受け、CFD規制の10年延長を打診

ASIC(オーストラリア証券投資委員会)は、個人向けCFD(差金決済取引)に対する規制措置について、さらに10年間延長する方針を発表した。

背景にあるのは、個人投資家が被っている甚大な金融損失である。2023–24年度のデータによると、個人CFD顧客の68%が損失を出しており、手数料支払額7,300万豪ドル(約80.4億円)を含めた純損失総額は4億5,800万豪ドル(約504億円)に上った。特にオプション取引を組み合わせたCFDでは損害が深刻で、実に85%の顧客が赤字で取引期間を終えている。

現行の規制は2021年3月に導入され、2027年5月に有効期限を迎えるが、当局は市場保護を継続するために長期的な規制枠組みの確保が必要と判断した。

暗号資産・デジタル資産決済型デリバティブへの適用拡大

今回の改定案における最大のポイントは、決済手段の文脈に左右されない規制基盤の構築だ。

現行命令の多くは現金決済や債務相殺による取引を中心にカバーしていたが、新提案ではデジタル資産(暗号資産)の移転によって決済が行われるデリバティブ商品へも投資家保護策が拡張される。これにより、原資産が株式や株価指数、商品、暗号資産のいずれであっても、契約の構造がCFDの要件を満たす限り、従来の保護措置(最大2倍〜30倍のレバレッジ上限設定、証拠金不足時のポジション強制決済、マイナス残高保護、顧客誘引策の制限など)が同一に適用される。

決済方式の違いを利用した規制アービトラージ(抜け穴の利用)を未然に遮断する狙いだ。なお、満期日が固定された一般的な暗号資産先物や特定オプション取引は、構造が異なるため対象外となる。

証拠金算出プロセスの厳格化と不適切慣行への対処

ASICは単なるレバレッジ制限にとどまらず、証拠金の計算方法や業者側の取引慣行に対しても監督の手を強めている。

一部の金融事業者が反対売買(ロングとショート)のポジションを相殺(ネッティング)することで必要な証拠金を不当に低く抑えていた実態が発覚したため、改定案では銘柄ごとに独立した初期証拠金の算出を義務付ける予定だ。

このネッティング慣行を巡っては、すでに28社の事業者が影響を受けた個人顧客へ計3,600万豪ドル(39.6億円)以上を返金する事態に至っている。また、取引インセンティブに関する規定の明確化や、法令用語としての“暗号資産”からより包括的な「デジタル資産」への表記変更も盛り込まれた。

実質主義に基づくオーストラリアの金融規制ロードマップ

一連の動きは、オーストラリア全体で進む暗号資産・デジタル資産市場の法制化プロセスと密接に連動している。

事業者に認められていた一時的な法的猶予措置は9月末で終了しており、10月以降はライセンス未取得または条件外での営業に対して民事・刑事上の厳格な罰則が科される。さらに2027年4月には専用の「デジタル資産枠組み」が施行され、カストディ事業者やトークン化プラットフォームも新ライセンス制度へと組み込まれる見通しだ。

決済技術の手段“ブロックチェーンか既存金融インフラか”ではなく、商品が持つ「経済的な実質機能」に焦点を当てて公平な規制を適用する体制が整備されつつある。

 

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