決済インフラとしての限界とトークン化預金の優位性
BIS(国際決済銀行)のパブロ・エルナンデス・デ・コス(Pablo Hernández de Cos)総裁は、FRB(連邦準備制度理事会)主催のジャクソンホール会議における講演で、現状のステーブルコインは大規模な日常的決済を安全に担うインフラとして十分な信頼性を備えていないと指摘した。
The head of the BIS, the central bank for central banks, Pablo Hernández de Cos said Friday that stablecoins, in their current form, aren't a credible means of payment at scale, and that tokenized bank deposits are the better path.
A perfectly reasonable thing to say when your… pic.twitter.com/nqRarC7p9j
— Lark Davis (@LarkDavis) August 29, 2026
国際決済銀行(BIS、中央銀行の中央銀行)のパブロ・エルナンデス・デ・コス総裁は金曜日、ステーブルコインは現状のままでは大規模な決済手段として信頼性に欠け、トークン化された銀行預金の方が…
同総裁は、既存の銀行システム内で管理され中央銀行通貨で決済される「トークン化預金」こそが、通貨制度の安定性を維持しながらデジタル化を進める本命のアプローチであると主張している。
しかし、BISはステーブルコインの完全排除を求めているわけではない。適切な法的・技術的安全策が講じられれば両者の共存は可能であり、トークン化預金が主要な日常的・卸売決済を担い、ステーブルコインは分散型金融(DeFi)などの特定分野に特化する役割分担が望ましいとの見解を示している。
貨幣に求められる3つの健全性における課題
BISが指摘するステーブルコインの主な課題は以下の3点に集約される。
単一性(等価交換性)の欠如:
市場のストレス時には1ドル相当の価値を維持できないケースや、銘柄間の直接交換が困難な場面が存在し、商業銀行預金のような確実な等価性が担保されていない。
相互運用性の制約:
異種ブロックチェーン間での移動にはブリッジ等の技術に頼る必要があり、ハッキングやスマートコントラクトの脆弱性といったリスクが伴う。
金融の健全性とコンプライアンス:
パブリックチェーン上のP2P(個人間取引)では、アンチマネーロンダリング(AML)やテロ資金供与対策を徹底することが構造的に困難。
金融システムと実体経済へ与える相反する影響
ステーブルコインの拡大は、裏付け資産となる財務省短期証券=T-Bill(米国政府発行の1年以内の短期国債)の需要を高め、政府の資金調達コストを押し下げる効果が期待されている。
米国のGENIUS法をはじめ、各国で厳格な準備資産管理が義務付けられつつあることもこの傾向を後押ししている。一方で、家計や企業が既存の銀行預金を解約してステーブルコインへ流出させた場合、銀行の低コストな資金調達基盤が揺らぐ。その結果、銀行の貸出金利引き上げを招き、家計や中小企業の借入負担が増大する懸念や、償還ラッシュ時の市場混乱リスクが残されている。
グローバル規制の格差と今後の展望
BIS傘下の金融安定研究所(FSI)が実施した、米国、EU(欧州連合)、英国、香港、シンガポール5地域の調査によると、ステーブルコイン発行体への規制アプローチには大きな隔たりがある。
米国やシンガポールが非銀行系発行体の付随事業(融資やカストディ等)を厳しく制限する一方、EUや香港などは個別許可を前提に柔軟な運用を認めている。さらに、規制が発行法人単位に留まりグループ企業全体へおよんでいない課題も浮き彫りになった。
代替案とされるトークン化預金も、国際的な実効テスト(Project Agorá:プロジェクトアゴラ等)が進むものの、閉鎖的なネットワークによる流動性の断片化や24時間稼働に伴う急激な預金流出リスクなど、実用化に向けたハードルは依然として残されている。























