SECがSAB 121規則を緩和=銀行の仮想通貨保管市場参入に道を開く

SECがSAB 121規則を緩和

SEC(米国証券取引委員会)は、銀行がSAB 121(スタッフ会計速報第121号)の仮想通貨保管規則を回避できるようにするガイダンスを提供し、事実上の規制緩和に踏み切った事がわかった。

SECは、SAB 121の厳格な会計要件を遵守せずに仮想通貨資産保管サービスを提供できるようにする新しいガイダンスを提供。SECがSAB 121規則を緩和した事を受け、銀行は特定の規制条件を満たすことで、仮想通貨資産の保管を提供できるようになる。この動きは、機関による仮想通貨保管への扉を開くものの、仮想通貨ネイティブ企業にとって公平性の懸念を引き起こし、さらなる混乱を招く恐れも浮上している。

SECの主任会計官であるポール・マンター(Paul Munter)氏は、金融機関が仮想通貨保管を非現実的にしていると業界で激しく批判されているSAB 121の例外を同機関が認めたことを明らかにした。さらに同氏は、新しいガイドラインを発表し、銀行がデジタル資産市場に参入する道を開いた。

SAB 121の背景と立法措置がSAB 121に異議

2022年にSECが導入したSAB 121は、上場企業に対し、顧客のために保有するデジタル資産を貸借対照表に記載することを義務付けた。

この規制は銀行にとってリスクをもたらすと物議を醸している。その理由として、保管会社が破産した場合、顧客を無担保債権者として分類する可能性がある事が挙げられている。資産を貸借対照表に載せ、仮想通貨の価値に等しい対応する負債を作成することが義務付けられているが、これは他の保管資産が通常貸借対照表に記載されていないため異例のことだ。その結果、金融機関は仮想通貨を保管するためだけに莫大な資本を保有しなければならなくなり、保管コストが法外に高くなる。また、この規則によって多くの銀行は追加の資本要件と規制上のハードルのため、仮想通貨保管サービスの提供ができなくなっている。

2024年5月、米国議会はSAB 121を規則として正式化しようとする法案を可決。しかし、議員らはSECがパブリックコメント期間などの適切な規則制定プロセスに従わなかったことで行政手続法に違反したと主張。超党派による支持にもかかわらず、最終的に、ジョー・バイデン(Joe Biden)大統領によって、SAB 121 を覆すと消費者と投資家の幸福が危険にさらされるという理由で拒否された。

新ガイドラインが銀行に救済をもたらす

SECのSAB 121に対する姿勢は変わらないと主張しつつもマンタ―氏は、企業がこれらの要件から免除される可能性がある2つの具体的な条件を概説している。

一つは、銀行は州レベルの規制当局から書面による承認を受け、顧客資産が破産から隔離されていることを確認し、契約において高い健全性基準を維持しなければならない。もうひとっつは、紹介ブローカーは顧客の暗号鍵を保有せず、顧客を代表する第三者エージェントと取引する場合、SAB 121を回避できるとのことだ。

新ガイドラインは、銀行がデジタル資産の適格保管を提供できるようにすることで、暗号市場に大きな影響を与える可能性があり、これによってデジタル資産の銀行保管のセキュリティを好む機関投資家にチャンスが開かれる。しかし、ガイドラインは課題ももたらし、特にOCC(通貨監督庁)の規制を受ける国立銀行は、必要な承認を得るのに困難に直面する可能性がある。

SECの新ガイダンスは明確さを提供するかもしれないものの、さまざまな金融機関の不平等な扱いについての疑問も生じている。