インターポールが香港の仮想通貨プロモーターに仮想通貨詐欺で赤色通告
サウスチャイナ・モーニング・ポストの報道によると、香港の仮想通貨インフルエンサー2人がインターポール(国際刑事警察機構)の赤色通告(※レッド・ノート)を出し、香港での詐欺1件と窃盗2件で指名手配中であることを世界の法執行機関に警告した。
香港出身の仮想通貨プロモーター、ウォン・チン・キット(Wong Ching Kit、※出生から2011年までは:クワン・ツィキット)氏は、モク・ツン・ティン(Mok Tsun Ting)氏とともにインターポールの監視下に置かれており、複数の刑事事件に関与した疑いがある。ウォン氏は、最近300万香港ドル(38万4,310ドル)を超える仮想通貨詐欺を含む複数の犯罪行為に関与したとしてインターポールの調査を受けており、インターポールはウォン氏に対してレッド・ノートを発行。香港での詐欺1件と窃盗2件の容疑を国際法執行機関に通知。モク氏は“コイン・ヤング・マスター”として知られ、数々の法違反や手の込んだ公然わいせつ行為など、物議を醸す過去があり、何度も法的調査の対象となっている。
インターポール公式サイトによると、ウォン氏は香港で詐欺1件と窃盗2件で起訴されており、モク氏はマネーロンダリング2件の容疑で捜査中の身だ。ウォン氏は2018年、恵まれない住民に3,800食以上の食事を提供するため、深水埗のレストランでスタントを披露して有名になり、ビルの屋上から6,000KHドル(約117,000円)を投げ、路上で大騒ぎを引き起こし、「公共の場での騒乱行為」の容疑で逮捕されたが、後に保釈されている。さらに、両氏らは2019年から詐欺容疑に巻き込まれている。現地警察は、仮想通貨マイニングマシンを宣伝したとして、「投資家を欺く共謀」の疑いでウォン氏を2度目の逮捕に追い込んだ。
またモク氏は、マシンを宣伝するためにセミナーやソーシャルメディアで多数の虚偽の主張をし、12人以上が300万香港ドル(約5,900万円)を失ったと報告されており、ウォン氏も詐欺共謀の罪で逮捕され、モク氏は共謀者として逮捕された。
JPEX取引所への関与
2023年、仮想通貨両容疑者は、破綻した仮想通貨取引所JPEXへの関与で話題となった人物で、ウォン氏は、仮想通貨取引所を宣伝したインフルエンサーの1人である。
JPEXは、2020年から香港で運営されている仮想通貨取引プラットフォームであった。約1年前、香港SFC(香港証券先物委員会)は、取引所が「デジタル資産と仮想通貨の取引を促進するための認可を受けた公認プラットフォーム」と主張しているのは虚偽だと投資家に警告している。
当局には複数の苦情も
金融当局は、インフルエンサーが偽りの手段でプラットフォームを宣伝したと述べ、取引所に関する苦情がいくつか寄せられているという。
SFCは、数人の個人投資家がJPEXから仮想通貨を引き出せなかったり、残高が変更されていると明らかにしており、KOL=キーオピニオンリーダー(※1)に対し、仮想通貨取引所の宣伝をやめるよう要請。その結果、ウォン氏はプラットフォームを宣伝するYouTube動画をすべて削除し、宣伝をやめ、要求に従っている。しかし、モック氏は詐欺的な仮想通貨取引所とのつながりの疑いで9月に逮捕され、後に保釈。元弁護士でインフルエンサーのジョセフ・ラム(Joseph Lam)氏もJPEXとのつながりで香港警察に逮捕されているとのことだ。この取引所の破綻は香港でこれまでで最大の詐欺事件とされ、2,000人以上の被害者から2億ドル(約307億円)近く盗まれており、同取引所とのつながりで73人が逮捕されている。
消費者の購買意志決定の際に強い影響力を持つ、なんらかの専門性を持ったインフルエンサーのこと。
ウォン・チンキットに対する進行中の捜査と香港での仮想通貨犯罪の広範な増加は、デジタル金融の憂慮すべき傾向を明らかにしている。インターポールのような国際法執行機関の関与は、これらの犯罪の世界的な側面を反映しており、仮想通貨関連の活動が拡大するにつれ、詐欺行為に対抗し投資家保護を確保するための厳格な規制枠組みと国境を越えた協力の強化の必要性も高まっている。なお、これらの調査の結果は、仮想通貨関連の犯罪行為に対処するための将来の政策と執行戦略に影響を与える可能性がある。