ジャオ・チャンポン氏はマネーロンダリングの罪で4カ月の禁固刑に服す
CZとして広く知られ、バイナンス(Binance)の創業者であるジャオ・チャンポン(趙 長鵬:Zhao Changpeng)氏が、カリフォルニア州ロンポックの低警備連邦刑務所で4カ月の刑期に服した事がわかった。
今回の禁固刑は、世界的な仮想通貨取引所バイナンスでマネーロンダリングを可能にした罪でジャオ氏が有罪を認めたことを受けてくだされた。ただし、連邦検察官は当初3年の懲役刑を求めていたが、リチャード・ジョーンズ(Richard Jones)判事は、ジャオ氏が違法行為を認識していたことを示す具体的な証拠がないとして、大幅に短い刑期を選択したとのことだ。
裁判所の判決と量刑の概要
量刑手続き中、連邦検察官は、罪状の重大さに基づき、より厳しい3年の懲役刑を要求していた。
しかし、ジョーンズ判事は、同氏が違法行為への直接関与の証拠が不十分だったことを受け、4カ月の刑を言い渡した。検察は、バイナンスのマネーロンダリング防止プロトコルの遵守は、違反が発覚してから著しく改善されただけだと主張。このような主張にもかかわらず、同氏の量刑は大幅に軽減され、長期の禁錮刑ではなく保護観察を求める弁護側の要求に沿う判決となった。
今事件の注目度の高さは、急速に進化する仮想通貨セクターにおける厳格な遵守の必要性を強調。同氏の有罪答弁とその後の量刑は、バイナンスが包括的なマネーロンダリング防止プログラムの導入を遅らせたことに光を当てた結果、取引所には43億2千万ドル(約6,800億円)という巨額の罰金が課され、同氏は個人的に5千万ドル(約78.7億円)の刑事罰金を科せられ、さらにCFTC(米国商品先物取引委員)から5千万ドルの罰金が課せられている。
なお、罰金と規制当局の監視は、仮想通貨に関わる金融業務における不遵守に伴う重大な財務リスクと評判リスクを示している。
ジャオ・チャンポンによる公式謝罪と今後の意向
法廷手続き中で注目しておきたいのは、公式声明の中で同氏は、自身の過ちを深く反省し、規制違反の全責任を負うと述べている事だ。
同氏はバイナンスで効果的なマネーロンダリング対策プログラムを導入できなかったことを認め、ソーシャルメディアの投稿を通じて仮想通貨コミュニティに公式謝罪し、支援の殺到を認めた。趙氏の前向きな発言は、刑期満了後に仮想通貨ビジネスから方向転換する意向を示唆。現在同氏は、教育事業に力を注ぐことを目指しており、これは同氏の職業的軌跡の大きな転換を浮き彫りにしている。
仮想通貨エコシステムへの影響
バイナンスと米国当局との法的紛争の頂点は、仮想通貨取引所を標的としたより広範な規制措置を反映した広範な調査の後に訪れた。
11月の和解で同氏はCEOを退任しており、これはデジタル通貨プラットフォームに対する規制当局の監視が強化されていることを象徴するものである。この動きは業界全体に波及し、主要な市場参加者に期待される執行措置とコンプライアンス基準の前例となっている。業界の利害関係者は現在、同様のリスクを軽減し、仮想通貨エコシステム内で持続可能な成長を促進するために、厳格な規制枠組みを遵守するというプレッシャーが高まっている。
同とバイナンスは、仮想通貨業界の成熟における極めて重要な章を表しており、同氏の判決とバイナンスへの多額の罰金は、金融業務の完全性を守る上で規制遵守が極めて重要であることを強調している。CZ は刑務所を出てから教育活動に取り組み始めており、同氏の経験は他の市場関係者にとって教訓となり、学習の機会にもなると期待されている。
サム・バンクマン・フリード氏に比べてジャオ氏の刑期が軽いのはなぜか
サム・バンクマン・フリード(Sam Bankman-Fried)も今年、禁固刑を宣告された人物だ。
フリード氏は25年の刑がくだされているが、なぜ、ジャオ・チャンポン氏は求刑より大幅に短縮された4カ月の刑となったのか。これは、バイナンスが米国のAML(マネーロンダリング防止)法に違反したという容疑で有罪を認めた後のことで、ジャオ氏とフリード氏の裁判手続きには多くの違いがあるという。
まず見た目の違いとして、ジャオ氏はスーツ姿であったのに対し、気楽な装いであった。つぎの違いとして、フリード氏が「仮想通貨詐欺」の烙印(らくいん)を押され、ジャオ氏は「仮想通貨の新たな冬を招かなかった」仮想通貨のヒーロー的見方がある点だ。複数メディは、同氏は刑期の短縮と引き換えに当局に何かを与えたのかと報じており、米国政府に対して何らかの影響力を持っていたのか、それとも米国はバイナンスを通じて仮想通貨に新たな手を加えたのか報道されない部分で多くの推測報道がなされている。
合意の一環としてバイナンスは、社内に「独立したコンプライアンス監視員」を設置している。これは、すべての政府機関がバイナンスで行われたすべての仮想通貨取引に目を光らせていることを示唆。CZ が連邦捜査局に提供した情報は、趙被告の刑期を 4 カ月に抑えるのに十分なものだったことが推測される。