FBIが仮想通貨の送金を追跡して1億ドル相当のダークウェブ市場を解体
FBI(連邦捜査局)は、違法な仮想通貨の送金を追跡した後、ダークウェブの麻薬市場の所有者を逮捕したことで、ダークウェブ市場を解体した事がわかった。
台湾在住のルイ・シアン・リン(Rui-Siang Lin)は、1億ドル(約156.2億円)相当のダークウェブの麻薬市場運営で有罪判決を受けた。オンライン上で「Pharoaoh(ファラオ)」として知られるリン容疑者は、2024年5月18日(土曜日)、ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港で逮捕されている。FBIのジェームズ・スミス(James Smith)副長官は公式声明で、「リンはシークレット・マーケットを約4年間運営し、数百万ドルの個人的利益を得ていた」と述べている。
逮捕のきっかけは容疑者による仮想通貨使用促進が背景に
同違法プラットフォームは、同種としては最大規模のプラットフォームの1つで、Torウェブブラウザーからアクセスできるオニオンベースの電子商取引プラットフォームであったとのこと。
このブラウザーは、ユーザーがトラフィックをサーバーネットワークにルーティングすることで、ダークウェブにアクセスし、匿名でインターネットを閲覧できるようにする。同プラットフォームは、ビットコイン(Bitcoin/BTC)やモネロ(Monero/XMR)などの仮想通貨で運営されており、ユーザーはさまざまな薬物を購入できるようになっていたとのことだ。
逮捕につながったきっかけは、主にマーケットプレイスが割引やエスクローサービスを提供してユーザーに仮想通貨の使用を促した事にある。他の法執行機関や複数の覆面捜査の協力を得て、FBIはプラットフォーム上で行われた取引を同容疑者まで追跡でき、同容疑者がKYC(本人確認)した無名の中央集中型暗号通貨取引所の口座に対して行われた。
当局が同容疑者のウォレットから追跡したビットコインの送金のうち少なくとも4件は、プライバシー重視の秘匿性の高いXMRに交換する「スワッピングサービス」に向けられており、その後、XMRは同容疑者が運営する仮想通貨取引所の口座に預けられたとのことだ。
2年間で容疑者の所有する口座残高が急増
FBIは取引所から同容疑者の運転免許証、メールアカウント、電話番号を入手し、逮捕に至った。
この口座の残高は、2021年の6万3,000ドル(約985万円)から2023年までに420万ドル(約6.5億円)近くにまで増加しており、今事件に関連する別の匿名取引所口座には、2023年7月から11月の間に450万ドル(約7億円)が入金されたという。この電話番号は、ドメインホスティングプラットフォームであるNamecheapの口座にリンクされていたことがわかっており、同容疑者のウォレットの資金は、ダークウェブマーケットプレイスを宣伝するドメインの購入に使用されていたことがわかっている。なお、同容疑者は、現在FBIに押収されている仮想通貨取引所BinanceとKrakenの口座も保有していたとのことだ。
DOJ(米国司法省)によると、このマーケットプレイスは2024年3月に閉鎖されたという。同容疑者は、継続的な犯罪行為に関与した罪1件で起訴されており、最低刑は終身刑とのこと。また、麻薬共謀罪1件でも起訴されており、最低刑は懲役10年、最高刑は終身刑となる可能性がある。さらに、マネーロンダリングの罪でも起訴されており、偽造医薬品や偽ブランドの医薬品を販売する共謀罪で最大5年の刑に処される可能性がある。