米国裁判所が北朝鮮関連の仮想通貨口座279件の凍結を命令

米国裁判所が北朝鮮関連の仮想通貨口座279件の凍結を命令

コロンビアの連邦地方裁判所は、北朝鮮工作員に関連する279の仮想通貨アカウントの差し押さえを命じた事がわかった。

2024年5月10日(金曜日)付けの報道によると、ティモシー・ケリー(Timothy Kelly)判事は、北朝鮮による仮想通貨窃盗との関連疑惑を理由に、アカウントを凍結して米国に引き渡す判決を下したとのこと。ただし、この事件に関与した具体的な金額は明らかにされていない。

この判決は、2020年8月に米国政府が起こした訴訟に基づくものである。この事件には、北朝鮮に関連する団体が違法な仮想通貨資産を、米国外の取引所または外国の陰謀者の管理下にあるホストされていないウォレットに送金するという内容が含まれている。当初、この訴訟は280のアカウントを対象としていたが、そのうちの1つの仮想アカウントは提訴から2年後に削除されている。

制裁を回避する北朝鮮に対して厳しい取り締まりを実施する米国

このマネーロンダリング(資金洗浄)活動には、盗まれた仮想通貨の出所を隠蔽(いんぺい)し、その後法定通貨に変換することが含まれており、これによって北朝鮮は制裁を回避している。

サンシャインコースト大学(University of the Sunshine Coast)のデニス・デズモンド(Dennis Desmond)サイバーセキュリティ講師は次のように述べている。

米国は仮想通貨盗難の分野で抑止にも回復にもほとんど成功を収めていない。

同氏によると、伝統的な体制の外で活動する北朝鮮工作員に対する「意味のある対抗策」は困難とのこと。最近の判決では、2019年の2件の仮想通貨取引所ハッキングに関連し、134の仮想ウォレットの押収も命じられている。犯人は、先のプラットフォームの1つから27万ドル(約4,200万円)以上を盗み、“チェーンホッピング”として、他の取引所と呼ばれるプロセスを介した一連の取引を通じて資金を隠蔽している。

このチェーンホッピングには、違法な資金をさまざまな種類の仮想通貨に交換したり、偽造したKYC(本人確認)情報を使用したり、位置情報を隠すためにVPNを使用したりすることで、資金洗浄が実行される。法廷文書によると、このプロセスに関与したIPアドレスの多くは、北朝鮮の攻撃者による以前の強盗で使用されたものと同じであったという。

北朝鮮のハッカーは、2023 年だけで4億3,000万ドル(約672.3億円)の仮想通貨損失を引き起こしましている。日本経済新聞電子版によると、2024年3月の国連報告書は、この国が歳入の約40%をこれらのサイバー攻撃を通じて兵器開発の資金として生み出していたことを強調。これらの動向に対応して政府は、仮想通貨セクターに対する監視を強化し、現在、仮想通貨混合サービスに対して厳しい取り締まりを実施している。