仮想通貨詐欺師がe-HKDを狙う中でCBDCの不確実性が深まる

仮想通貨詐欺師によるe-HKDへの標的が既存CBDCへの懸念につながる

詐欺師らは香港のe-HKD試験運用を標的にしており、金融自主性の侵食など既存のCBDCの懸念が再燃している事が分かった。

米国シンクタンクAtlantic Council(アトランティック・カウンシル)によると、国家デジタル通貨の開発競争は世界中で激化しており、74カ国がCBDC(中央銀行発行デジタル通貨)の開発または研究を積極的にしている。しかし、CBDCは依然として論争の多いテーマであり、批評家は金融主権の喪失の可能性について警鐘を鳴らしている。

このような懸念にもかかわらず、香港は2024年3月14日(木曜日)にe-KHDパイロットのフェーズ2を開始。このパイロットテストでは、小売向けのプログラマブル決済(決済の自動実行)、トークン化された資産決済、オフライン決済をより深く理解するとともに、ホールセールCBDCも検討することを目指している。ただし、HKMA(香港金融管理局)は、仮想通貨詐欺師がこのパイロットを悪用していると報告しており、CBDC採用に反対する議論に重みが加わっている。

e-HKDは仮想通貨詐欺師から安全ではない

HKMAは、e-HKDパイロットへの参加者であると偽る団体の報告を受けていた事を明らかにしている。

この偽会社は、資金を募るために、e-HKDパイロットテストに関連した詐欺的な投資機会や商品を宣伝。HKMAは国民に対し、捜査のためにこのような事件を香港警察に通報するよう呼び掛けた。HKMAは、仮想通貨詐欺師と戦うためのCBDCパイロットに参加する認可団体の公式リストを公開。参加者には、Alipay(アリペイ)、Visa(ビザ)、Mastercard(マスターカード)といった大手決済企業のほか、香港の紙幣発行銀行である中国銀行、スタンダードチャータード、HSBCも含まれている。

HKMAは、合法的な試験参加者は誰も個人にe-HKDにリンクした投資商品を提供しないことを国民に改めて述べており、国民に対してこのような計画に対して引き続き警戒し、詐欺の疑いがある場合は当局に報告するよう呼び掛けている。仮想通貨詐欺師による香港のe-HKDプログラムの悪用は、中央銀行ですらデジタル領域における詐欺や違法行為のリスクを免れないことを浮き彫りにしている。これは、CBDCに関連する潜在的なマイナス面をめぐって渦巻く広範な懸念をさらに強める事になると改めて危機感を募らせている。

CBDCへの懸念

批評家は、サイバーセキュリティの脆弱性に関するCBDCの潜在的なマイナス面について懸念を表明している。

彼らは、知識のあるハッカーが個々のアカウントを標的にする可能性があると主張。同様に、集中型台帳システムの運用は、敵対的な国家やサイバー犯罪者によるハッキングの影響を受けやすくなる。さらに懸念されるのは、CBDCによってもたらされる金融主権の潜在的な喪失と、行き過ぎた政府による国民への監視余地があることだ。

e-HKDの試験運用を狙う仮想通貨詐欺師の台頭は、CBDCの展開において当局が直面する課題を浮き彫りにしている。詐欺師を阻止することは、このようなプロジェクトへの信頼を築くために極めて重要であるものの、CBDCに対する国民の抵抗は、金融主権の喪失に関する深刻な懸念を生み出しており、耳を貸さなくなっている。