SEC委員長が金融危機防止のためAI規制を求める緊急要請
SEC(米国証券取引委員会)委員長のゲイリー・ゲンスラー(Gary Gensler)氏は、英国の大手経済紙であるフィナンシャル・タイムズ紙との最近のインタビューで、AI(人工知能)が金融安定にもたらす潜在的なリスクについて重大な懸念を表明した事が分かった。
同委員長は、直ちに規制措置を講じなければ、今後10年以内にAIが引き起こす金融危機は「ほぼ避けられない」と警告している。具体的に同委員長は、金融危機は2020年代後半か2030年代前半に起こる可能性があると予測。複数の金融機関が同じモデルに基づいて決定を下すことは群集心理を引き起こし、安定性を損なう可能性があると警告した。フィナンシャル・タイムズ紙によると同委員長は、AIを規制するという任務が米国当局にとって複雑な課題であると感じているとのこと。
同メディアの報告書は、リスクは個々の金融機関に限定されるものではなく、複数のセクターに影響を与える“水平的な”問題である。そのため、既存の規制枠組みは主に銀行や証券会社などの個々の機関を監督するように設計されており、相互に影響を及ぼしていると述べており、AI の分野別影響は対処が難しい問題だと主張している。
AIによってもたらされる広範な課題には対処できない可能性を指摘
2023年7月初旬、SECは予測データ分析における利益相反の軽減を目的とした規則を発表したとみられる。
しかし、報告書によると、このルールはブローカーディーラーや投資アドバイザーが使用するモデルに限定的に焦点を当てていたとのことだ。同委員長は、特に基礎的なモデルが金融監視機関が伝統的に規制していない大手テクノロジー企業によって作成されることが多い場合、そのような対策はAIによってもたらされる広範な課題には対処できないと指摘している。
なお、同委員長の指導の下、SECは7月に提案された新規則により、ブローカーディーラーや投資顧問によるAIの使用を抑制しようとしている。しかし、この規則は共和党議員や業界団体の反発に直面しており、企業が投資家の利益よりも自社の利益を優先して予測データ分析やAIを含む同様のテクノロジーを利用することを禁じた新規制は、まだまだ反発は続きそうである。